「──まなちゃん?」
───…ダメだ。
こんなんじゃ全然ダメ。
何もかもマキのせいにしてスネてたら、ここまで来た意味ない。
人のせいにしてたって何も変わんない。
本当の意味で前になんか進めない。
だから生まれ変わりたくて、全てを捨てて来たのに。
───もういつまでも弱い“彩”じゃいけない。
せっかくこういう接客業に来たんだし。
“人を見る目”を養いたいな……。
「───萌ねー、美月ちゃん尊敬してるんだぁ♪
同い年であんな早さでナンバーワンになって、すっごい努力家さんだよねっ♪
それに気取ってなくて、仲良くしてくれるから大好きなの♪
早く萌も追い付きたいな~♪」
この子は───…
そんな子じゃなさそうだ。
信じてみよう。
こんな時だからこそ。
「───萌……」
「なぁに、まなちゃんっ♪」
「あたし入店したばっかで全然よく分からなくて…。あの、良かったら色々教えてね。」
「もっちろーん!!
一緒にナンバーワン目指して頑張ろぉっ♪」
───…萌は、マキのいじめ以来初めて出来た友達だった。
競争が激しい世界でビクビクしていたあたしに、萌は持ち前の明るさで自らあたしに近づいて来てくれた。
友達の作り方を忘れてしまったあたしに、もう一度友達という接し方を教えてくれた萌。
この世界で、こんなやり取りをして友達が出来たから“泣きそう”になったなんて言ったらビックリされるだろう。
そんなキャバ嬢も珍しいと思う。
それでもあたしは嬉しかった。
こんな小さな女の子同士のやり取りさえ、懐かしくて嬉しくて。
それをまた壊さないように大切にしたいな……
「───愛美です。よろしくお願い致します。」
「あれ?見ない顔だね。
いつから入ったの?」
「今日から入店したんです。まだ全然慣れてないんですが──…」
「あはは、でも新鮮でいいよ。飲んで飲んで♪」
「はい、気遣いありがとうございます。」
────接客。
断じていた、人との交流。
楽しくて、どんどんこの仕事にやりがいを感じる程に───…
こんなにも、人との関わりを切り離していた自分に驚いた。



