────カツン…
一歩一歩離れていく美月の背中を感慨深く見つめていると
「───ねーっ♪♪♪
美月ちゃんって本当すごいよねぇっ!♪」
「──えっ!!!!」
いつの間にかあたしの隣にちゃっかり座り、美月を尊敬の眼差しで見つめている女の子───…
……っつか誰!?!?
「───あ、愛美ちゃん初めましてぇ♪
───あたし、萌っ!
最近入店してね、多分愛美ちゃんと一番時期近いよぉっ♪」
えへへと屈託ない笑顔で笑う“萌”は、確か──…
「───あっ!!
もしかして、さっきの成績発表で10位だった萌ちゃん?」
「ピンポーンっ♪」
栗色のくるくるパーマが当たっているショートカットに、バービーみたいな大きい目。
白いドレスを着て、キャッキャとエクボを作って笑う彼女は──…
───まるで“天使”みたいだ。
「───ねぇ、あたし愛美ちゃんの事“まなちゃん”って呼んでいーいっ?」
「う、うん」
「じゃあ萌の事は“萌”って呼び捨てにしてぇっ♪
あたし多分まなちゃんとタメだよ♪」
「……えっ本当?」
「うんっ♪
同じ時期に入店した子がいなかったから寂しかったんだぁ。
さっき朝礼でまなちゃん見た時、ビビッて来たのぉ♪
何か童話から出てきたお姫様みたいでビックリしちゃった!
さすが美月ちゃんの友達だなって感心したもん!」
「………」
「?どったの?」
「…ううん…」
───トラウマ、だろうか。
本当は
あたしがナンバーワンの
“美月の友達”だから
近付いて来たんじゃないの?
───…あたしは、どうもマキの件で人を疑ってかかってしまう癖がついたらしい。
せっかくここで新しい友達を作るチャンスなのに、どうも言葉の裏を読もうとしてしまう。
……やだ……
萌はどう見てもいい子そうなのに。
そんな感じに見えないのに。
───だけどマキも最初はそうだったんだ。
─────人が怖い。
どうも信じられない、
言葉が胡散臭い。
───…あたしはここで、
女の子に対して完璧に
“人間不信”に陥っている事に気づいた。



