────…驚愕の事実。
美月は最年少、最速という驚異的な早さで、何とこの“Heaven”のナンバーワンに君臨したのだと言う。
「…ってみんなは伝説みたいに言うけど~…
あたしだって簡単にここまで駆け上がったんじゃないんだからね。」
朝礼が終わり、次々と輪がバラけていく中、美月はあたしとホールを歩きながら話し始めた。
「───ヘルプから始まってー……
そっから指名取るために努力、勉強、営業、営業、また営業で血が滲むよ~~っっな努力だよ、マジ。」
「……い、いや。
だからどっからどう聞いても武勇伝だよ、それ。」
……つか、今の用語半分理解出来なかったけど。
大丈夫かなぁ…あたし…。
……なんて、また弱気になっていったその時。
「───あ、いたいた!
愛美ちゃ~ん!!研修するからこっち来てくれる?」
「───あっ、はい!」
伊達店長がまた手招きしてあたしを呼び
「研修頑張れーぃ♪」
「うん、行ってくる!」
美月に急いで手を振り、まだ開店していないホールに入っていく。
「───じゃあこっちに掛けてくれるかな。」
「はい、失礼します。」
───やはりHeavenは、
しっとりして落ち着いている。
無駄に明るくギラギラ照り付けない、優しくも穏やかな照明。
目が行き届かない細部にまでこだわっているホール内。
うるさくなく、麗しい女の子達の接客とキャストの気配り。
……こんなとこでお酒飲んでたら、そりゃ優雅な気持ちにもなるだろう。
「───じゃあ研修しておこうか。
何もそんなに難しくないから、肩の力抜いて見ててね。」
「…はい。」
「───…まずは立ち振舞い。
立ってる時も座る時も、姿勢と仕草を出来るだけ綺麗に見せれるように。
背筋しっかり伸ばして、足も組んだりせずに。」
あたしはスッと背筋を伸ばし、座り直す。
「そうそう。
あとはしっかりお客様の目を見てお話しする事。
お客様が何を求めているかしっかりキャッチして。
経験を積めば、
“このお客様は楽しくお酒飲みに来てるんだなぁ”とか
“このお客様は何か嫌な事があって飲みに来てるんだなぁ”とか掴めてくるようになるから」
「…はい」



