────ふわっ…。
高級感溢れる椅子は思った通り、座り心地も抜群。
───すっごー……
この椅子だけで何十万するんだろ?
………って……
もう思う事が全部庶民すぎる……。
だって何もかもが非現実過ぎて、浮世離れな世界なんだもん。
キャバクラなんて、ドラマとか、マンガとか……。
つい最近までの自分とは全く縁のない世界だったし。
……何か自分がこんなとこにいるなんて、まだ信じられないや……。
「───…じゃあ店長、後は宜しくお願いします。彩、頑張ってね!」
「……あ、うん、ありがとう美月。」
美月は扉の隙間から小さく“頑張って♪”と手を振り、ゆっくりと扉を閉めた。
────パタン……。
扉が閉まり、密室になった途端に緊張してしまう。
……き、緊張し過ぎて吐きそう……。
「───…えーっと…
桜井さん……だったよね?」
そんなあたしを気遣うかのように、終始穏やかな笑顔で対応して下さる店長。
「…あ、はい。
すみません、すごく緊張してしまって……。」
───…これじゃ落ちるかも……。
客商売、トーク必須なのに……。
途端に不安になり、ギュッと拳を強く握る。
───すると
「───…じゃあ、桜井さん。
いつからうちで働ける?」
──────……
「────え?」
今何て………。
「────美月から話は聞いていたけど、期待どうりだよ。
ぜひ、うちに来て働いてほしい。」
「……え……
それ……って……」
店長はトントンと書類を机の上で直し
「───“採用”。
……させてもらってもいいかな?」
笑顔であたしに微笑みかけた。
……う、うそ……?
採……用……?
「───あ、ありがとうございます……!」
つい笑顔を溢し、顔を上げると店長はニッコリと笑顔を返してくれ……
「この世界が初めてでも、やる度に慣れていくから安心して頑張って欲しい。
じゃあ……そうだな……
ここでの名前を決めようか。」
店長はあたしの履歴書と身分証明書をコピーしながら振り向いた。



