キュッと胸が詰まる。
いつから、あたしはこんなに痛みに強がりになった?
いつから誰にも何も言えなくなった?
「───…美月……
あのね…あたし──…」
いつから
「───…あたし……
いじめ……られてるんだぁ……」
SOSが言えなくなった?
「────…え……?」
だってカッコ悪い。
自分がいじめられてるなんて認めたくない。
知られたくない。
情けない、恥ずかしい。
「……へへ……
大学にもなって……今さら、だよね……
カッコ悪……」
───…ほら、また。
変なプライドが先走って、自分を守る言葉が殻を張る。
あたしはいつもそう。
他人の視線や、自分がどう思われているかが怖くて、身動き出来なくなって自爆する。
飛べない鳥が空に憧れているように、あたしも何かに追い付きたいけど実際は出来ない。
────…もう、やだ。
こんな弱い自分が嫌い。
嫌い。
─────大っ嫌い。
「───いじめって……
何……?まさか彩がいじめられてるって事……?」
─────………
…………────
あたしは、初めて自分の身に起こっている事を吐き出した。
「───…何それ酷い…
ただの勘違いから来る妬みじゃん……」
美月は固唾を飲むように、神妙な顔つきで静かに耳を傾けてくれていた。
「……」
グスグスと鼻を擦り、真っ赤な目で頷く事しか出来ないあたし。
「───…だからあんな夜遅くまで働いてたのね……?」
美月は眉をひそめ、何とも言えない複雑な表情であたしに桜色のハンカチを手渡した。
「───…これはさすがに人間として終わってるよ。
やることの域超えてる。」
美月はダンボールを拾い、唇を強く噛み締めた。
昔から知っている親友が、今こうしていじめられているなんて知って複雑だろう。
あたしも、美月や由梨、ナナがいじめられているなんて聞いたら理解出来ないと思う。
それぞれの良さを知っているからこそ…
同じ時間を共有して来たからこそ…
「────許さない…」
あたしもそう言うだろう。



