「……良かったぁ……。
誰もいない……」
───ふぅ、と深呼吸をしてあたしは準備室の中へと足を踏み入れた。
机の上には、もうあたし宛のダンボールしか用意されていない。
「……………
働いた15万円……
無駄にならなくて良かったな……」
そっとダンボールに手を伸ばした瞬間。
─────グラッ!
「────!?!?」
手に持ったダンボールがあまりにも軽すぎて、あたしは反動でよろけてしまった。
────……え……?
ドクン、ドクン、ドクン…
今にも呼吸が止まりそうになり、軽く頭痛が走る。
………まさか?
まさか、いくら何でも……
そんなはずないよね……?
そこまで人間腐ってないよね───…?
でも、あまりにもダンボールの中身軽すぎる……。
─────…カタカタ……
“大丈夫”。
震える指先に根拠のない大丈夫を言い聞かせ、
─────カサッ……
ダンボールを開いた瞬間、視界が絶望の色に染まった。
「────……ない……」
ダンボールの中身は、空っぽ。
「───…うそ……
うそでしょ……?」
─────バサッ!
ガタンっ!
……信じられなくて、信じたくなくて。
何度蓋を閉じて開けてみても、当たり前に中身が増える事はなかった。
「─────……」
そんな────……
どうして?
何で?
あたしの教材は?
働いた15万円は?
「────…どこっ…行っ…~~~~~っ……」
─────ガクンっ…
膝から崩れ落ち、声にもならない嗚咽が部屋を響かせる。
「───…ふ……っ……………ぇっ……」
────タンッ
タンッ─────…
ダンボールの上にとめどなく降っていく涙の洪水。
もう涙を止める方法が分からない。
我慢の臨海点があるとすればまさに今。
「────…もうやだ…
もうやだぁぁぁ───…!!!!」
誰も手を差し伸べてくれる人がいないこの空間に向かって、大声で泣き叫んでた。
───…声が、張り裂けそうになるまで。



