──────……
「はい、確かに15万円頂きますね。」
「………」
ATMで下ろしたお母さんからの仕送りと自分の貯金を崩し、それを仕方なく先生に渡す。
こうしないと、仕方ない。
────…働かなきゃな……。
今のバイトだけじゃ、渡して穴空いた生活費を埋められない。
───…帰り道。
トボトボと街へ繰り出してバイト情報誌を取りに行くあたしの目の前に───……
「……ん……?」
たまたま通り掛かった一店の雑貨屋さんに目が止まった。
───…そこに、
一冊の分厚いノートと、
煌びやかなkeyの形をしたネックレスが飾られていた。
……何これ?
かなり分厚い本みたいな…。
かなり年期入った古書みたいな……
アンティークっぽいなぁ。
……でも、何か姫っぽくて可愛い……。
……なんて、気に入ったらついつい立ち止まってしまう。
これは完璧あたしの悪い癖。
手に取ってジーっと見つめていると
「───あ、いらっしゃいませぇ♪」
………げ。
奥から可愛らしい店員さんが、あたしにニコニコと近寄って来る。
───やば、さっさと立ち去ろ……
そう思っていたのに
「───お客さん、これ見ていらしたんですか?」
「え……、あぁ……まぁ……」
……つ、捕まってしまった。
こういう時、スルーして背中向ける事が出来ない自分が嫌になるよ……。
チラリ、と振り返る。
「───これね、ちょっとデザインと仕掛けに凝ってる“日記帳”なんですよ♪」
「───…え……」
に、日記帳?
こんな分厚いのが?
「───これが鍵になっていて、いわゆる鍵付き日記なんです。
しかもこの鍵はネックレスにもなるんですよね。
ほら、可愛いでしょ?
お客さんの雰囲気にピッタリです。」
────キラッ……
店員さんに鍵の形をしたネックレスを首に掛けられ、
「……………」
あたしはジッと自分の首元に見入ってしまった。
────……綺麗……



