───…もう春も終わり、季節は夏に向かおうとしていた頃。
あたしは何とか踏んばって学校に通っていた。
だって“大学”と言う場所は、義務教育とは違って数回講義を休むだけでテストを受ける資格が無くなる。
……イコール、それは留年を意味していた。
そんな甘くない現実。
勉強といじめは関係ない、と。
ずっと続くわけじゃない、と。
卒業まであと二年我慢すればいいだけの事だと。
───…あの頃、何度自分にそう言い聞かせていただろうか。
でもそう唱えていないと押し潰されそうで、堪らなかった。
───…そして……
相変わらず日にちが過ぎ、ある夏の始まりの事だった。
いつものように学内実習が始まり、先生が実習室に入って来た所で
「───今日はこの実習の後、後期分の教材15万円を徴収しますからね。
じゃあ実習を始めましょう。」
───…そう。
今日は後期の教科書や、実習道具購入の日だった。
……大丈夫。
ちゃんと15万円は何回も確認してロッカーに入れたし、ちゃんと鍵も掛けたし。
────“大丈夫”。
………実習後、更衣室に入った瞬間その安心が砕け散った。
「─────……」
嘘……でしょ………?
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桜井 彩
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名前を消すかのようにボコボコにされたロッカー。
役割を果たすはずの鍵も壊され、無惨にも原型をとどめていない。
────………。
放心して佇むあたしを置いて
「お疲れ~♪」
「じゃあね♪」
次々とクラスメイトが後ろを楽しそうに通り過ぎ
─────パタン……
更衣室に一人きりになった途端
「……………っ
お金───……!」
─────バッ!
慌ててバッグを探るも
「───…ないっ…
ないよ……
ないっ───……!」
入れてあった15万円はどこにもなく、姿を消してしまっていた。
────やられた……
─────ペタン……
あたしはもう立っている事が出来ず、ヘナヘナと床に座り込んだ。



