先生は何度もレポートを確認し、
「───桜井さん。
あなただけレポートが提出されていないけれど、いいのかしら?」
「───……えっ…?」
────耳を疑った。
だって、そのレポートはさっき確かに提出したはずだったから。
そう、準備室に課材取りに行く前に──…。
「───あの、そんなはずありません。
ちゃんとさっき提出しました。
すみません、もう一度だけ確認して頂けませんか?」
「もう何度も確認しましたけど、あなたの分は見当たりませんでしたよ。
残念ですが、減点対象にさせてもらいますからね。
今度から、やってない時は下手に言い訳なんかしないで、素直にやってないって言って下さいね。」
「────……」
……そんな───……
やってないとかじゃなくてちゃんとやったし、確かに提出したのに……
どうして?
あんなに連日夜遅くまでやって完成させたレポートは?
一体どこへ消えてしまったの?
「───…さぁ、それじゃ今日は皆さんからのリクエストで、このビデオを鑑賞しましょうね。」
「────……」
先生の声もやけに遠くなり、ただ茫然とレポートの行方を考えていると
────…クスクス……
後ろの方から、そんな小さい笑い声が聞こえた気がした。
……え………
このタイミングで笑われてるって、もしかしてあたしの事を笑ってる……の………?
違うよね?
違うよね───…
────ドクンドクン…
段々速度を上げて早くなっていく心臓に恐怖も増し、
少しでも落ち着かせたくてビデオを見ようと顔を上げると
“若者に広がるリストカットの実態──…”
「─────…ひっ…!」
━━━━━ガタン!
「───桜井さん!?!?」
あまりにも動揺したのか、小さく悲鳴を上げて立ち上がっていた。
───…テレビの画面に映る、手首から流れる鮮血。
そこには
“みんなからのリクエスト”が映し出されていた。



