………もしかしたら、余計なお世話かもしれないな。
協力したいけど斗真くんの気持ちも尊重したいし、それに何より───…
───マキは、何も話して来ない。
……そこが、一番引っ掛かる。
“彼氏いるの?”って聞いた時に、“いない”とキッパリ言われた事。
………それってやっぱり、あたしには言いたくないのかもしれない。
悲しいけど、“悩みを言える間柄”とは認識されていないんだろう。
───…やっぱり……
下手に関わるのはやめといた方がいいかな……。
……と、そう思った矢先だった。
「────ねぇ、彩。」
準備室から出て施錠した瞬間。
マキはあたしに向かって、ポツリと口を開いた。
「───…彩ってさ、
前に忘れられない人がいるって言ったよね?」
「……え?
あ、うん……」
……ぶんちゃんの事……だよね、多分……。
「───実はさ……
彩と同じでマキにもね…………その………
忘れられない人がいるんだぁ……」
「……え……」
急に話し出したマキに思わず振り向き、耳を傾けた。
「……昔マキが一方的に好きだった人でね?
付き合ったりは出来なくて、マキがずっと片想いしてた人なんだけど……。
ほんとにずっとずーっと忘れられなくて……
彼氏とか作ったりしても、すぐその人と比べたりとかしてね……。
長く続かないし、相手に気持ち入らなかったりですぐ冷めちゃうの。」
─────……あ……
俯くマキの口から出た本音。
斗真くんが“振り回されていた”って言ってたのは、もしかしてこの事と関係あるんじゃ……
「───ねぇ彩……
ずっと忘れられない人がいるって……
……マキ……
………変なのかなぁ……?」
───涙目になりながら話すマキを見て、少し前の自分と重なった。
────彩と一緒だ。
ぶんちゃんをどうしても忘れられなくて、
前なんか到底向けなくて。
そうやって、一歩前に進む事。
新しい恋をする意欲さえ湧かなかった頃の自分と。
───…マキはやっぱり、どこかあたしと似ていた。



