その真剣な顔でもドキドキさせてくるこの人は、本当に罪な人だと思う。
──…次の瞬間にはもう
「……うん……じゃあ頑張ってみる……」
───…ほらね、頷いちゃってるあたしがいる。
「───よっしゃ!!♪
じゃあ俺と彩のコラボやな♪
さっそく張り切って曲作るわ♪」
────ニコッ♪
……う。
やっぱりその笑顔には弱いなぁ……。
朝岡さんが嬉しそうに笑うと、こっちまでニコニコ笑ってしまうこの単純さ……どうにかしてほしいな……。
───…ねぇ、朝岡さん?
あの時、あたし自身を見込んですくいあげてくれた事が、ただ単純に嬉しかった。
……朝岡さん、あの時笑って教えてくれたよね。
……覚えてるかな。
今日は何が綺麗だった、
今日はこれを見て自分はどう思った。
心に思った疑問とか、感じた事。
────自分の信念。
ありのままの“今”を表現すること。
心の言葉を自分で表現出来るように、と。
「───…彩にはいつかそうなって欲しい。
だから俺は、いくら彩でも作詞に関しては手厳しくいくよ。」
そう笑って、あたしに“何かを伝える機会”を与えてくれたのは朝岡さんだったね。
「───…じゃあ…
あたしが書いた言葉を、朝岡さんがステージで歌ってくれるの?」
「そういうこと♪
───約束、な。」
「うんっ!!!!約束♪」
─────キュッ……。
大きな小指と小さな小指を絡ませて。
あなたと、笑顔で夢の約束を交わした。
……それも、また。
すぐ叶えられるはずの近い約束が、しばらくは届かない遠い約束へと形を変えるんだけど───…。
───…ねぇ、でも。
あなたと交わした約束や淡い夢は、どれもあの時叶わなかったけど。
後悔は何一つしていない。
それどころか、朝岡さんには感謝してるよ。
あの日、あなたはあたしに自分を伝える術を与えてくれた。
心の感情を吐き出す方法をあたしにくれた。
───…だから
今のあたしに全て繋がっていくんだと思う。
───…だから
今のあたしがここに存在しているんだと思う。



