───…朝9時過ぎ。
「───ご馳走様♪」
冷蔵庫に置いてあったトーストを焼いて、コーヒーを淹れただけなのに、朝岡さんはそれだけで喜んでくれた。
「……トースト焼いただけだよ?」
「スクランブルエッグ焼いてくれたやん♪」
……うーん、でもなぁ…。
本当はもっとちゃんとした朝ご飯作ってあげたかったなぁ……。
でも、ゴローちゃん情報は本当だな。
朝岡さんが手作り料理好きっていうのは本当みたい。
たとえ満足に時間が掛かってない料理でも、朝岡さんはすごく喜んでくれたから。
明日のデートの後。
もし、またこうやって朝を一緒に迎えられるのなら……
その時は、そうだな。
これよりはちゃんとした朝ごはん作ってあげたいなぁ…。
「────彩?
そろそろ行こう。」
「あ、うん!」
玄関で待ってくれている朝岡さんに駆け寄り、二人揃って外へ出た。
─────パタン。
“明日またここにいれる”。
そう簡単に信じていた。
───…実際……
ここに来ることになるのは、もうずっと先の事になるんだけど……
そんなことはもちろん全く予想も出来ないまま。
「お邪魔しまーす♪」
───…あたしは、朝岡さんの車に笑顔で乗り込んだ。
「んじゃ出発するな♪」
「うんっ♪」
───……チラッ。
朝岡さんの運転してる姿を、気付かれないように横目で拝見。
左手でハンドルを握って 、右手で軽くドアに持たれかけている朝岡さんに再びドキドキ。
……昨日から色んな朝岡さん見れて、本当幸せだなぁー……。
───…なんて、一人ほのぼのしていると
────パチッ。
ふいに朝岡さんと目が合い
「……何で前向かなあかんねんやろな。」
「……え。
じ、事故る……。」
「───俺は今ずっと横向いときたい気分なんやけどな。」
────…ドキッ!
「……ば、バカ……」
「うん。」
「ちゃんと前向いといて。」
「うん。」
「……でも
赤信号の時はこっち向いていいよ?」
「……うん。」
──…朝岡さんは呆れたようにふっと笑った。



