さっきまでゆっくりだった脈が急に加速し出して
「…………」
ベッドの上、体を硬直させながらギュッとクッションを握りしめていると
「───…そのままベッド使っていいよ。
俺こっちのソファで寝るし。」
────スタスタ…
朝岡さんはあたしの頭をもう一度撫で、ソファに行ってしまった。
「…………」
───あれ……
「───…電気消すな?」
「……あ、うん……」
────パチッ…
スタンドライトも光を消し、真っ暗な視界。
「彩、おやすみ。」
「……おやすみ……」
────………
……考え過ぎ……かぁ。
一人で期待して、ちょっとバカみたい。
でもこれでいいの、これで。
我慢した分、幸せは何十倍って言うじゃない。
そうだよ、だから今は我慢。
────……
でも……
「……朝岡さん……」
「……ん……?」
ねぇ
でも
「────……
……寂しい───……っ」
矛盾してるって分かってるよ
でもこんな同じ空間
近い距離にあなたがいるのに、遠くに感じて
手を伸ばせば届く距離なのに、届かなくて
何だかとても
もどかしくて
─────ギシッ……
「────…あのさ……
一応これでも我慢してるからさ……?
頼むからそんな……
“寂しい”とか誘うような事言わんといてよ……
簡単に誘われるやん……」
────………
……そうやって。
“寂しい”と急にワガママを言うあたしを抱き締めてくれた時。
感じたあなたの温もりに、また一つ愛しさを見つけた。
「……だって、急に真っ暗になったから。
…よくあるでしょ…?」
「……何それ」
───…あの時ね、あんな可愛くない事言って誤魔化したけど。
本当は、嬉しさのあまり涙目なあたしがいたんだよ。
「ほんまに俺が一緒に寝てえぇの?」
「いいよ♪じゃあ早速ベッドに境界線引こう♪」
「……何それ……」
そう笑い、朝岡さんはベッドに入って来た。



