───…“音楽”。
朝岡さんの生きがい…。
知りたい、な───…。
どんな小さな事でも、些細な事でもいい。
朝岡さんの関わってきたもの全てを知りたい───…。
……そんな小さくて実は大きい独占欲に、つい翻弄されてしまう。
「───……聞きたいな…
朝岡さんの過去……。」
「────……」
朝岡さんは返事代わりに微笑み、あたしの体をそっと引き寄せ
「───…そうやなぁ…
まぁとりあえず、音楽を始めたんは中学の時。
吾郎に軽いノリで引っ張られて、先輩らとバンド組んでさ。
───それが“ARDER”。
ポルトガル語で“羽”って意味で…羽好きやからさ。
それが俺と吾郎が一番最初に属してたバンド。」
「……“アーザ”…。」
確か──…
学園祭のパンフの備考にも書いてあった…。
「俺はその時、まだヴォーカルじゃなくてギターやってん。」
「───…へぇ…」
なんだ、意外。
綺麗な声だから、ずっとヴォーカルだと思ってた…。
「……でもまぁ、先輩らは遊びでやってたようなもんやからさ。
先輩らが卒業して、俺と吾郎だけになって…
“本格的に自分らでバンド組もう”ってなって。
───…そこでスカウトしたのが、壱とマリア。」
「……いっちゃんとマリア?」
「……うん。
壱はたまたま路上で弾き語りしてたのを拾って~。
マリアは何回も逃げられたけど捕まえた感じ。」
「あははっ、それじゃ犬と猫みたい。」
「いや、マジでそんな感じ。
特にマリアは大変やった。なかなかなついてくれへんから、噛まれてばっかやったし。」
…マリアかぁ…
なーんか想像つくなぁ…。
でも今はあの通り、朝岡さんに絶対的な忠誠誓ってるもんねぇ……。
「───それで何とか“紅”結成して──…
それは良かったけど、今度は音大行こうにも行けなくて、みたいな。
……あ、これは前図書館で話したか。」
「……うん聞いた。
亡くなったお母さんが助けてくれたんだよね。」
────…そう言った後。
……ん……?
ふと見た視線の先に、一枚の写真が飾ってあるのに気がついた。



