───…そんな淡い気持ちに後押しされて、かな?
────ギシッ。
朝岡さんとの距離をほんの少しでも埋めたくて、あたしはベッドから起き上がった。
「───…ん?
何やこっち来たん?
まだ寝といていいのに。」
「……えへへ……」
……だって、ベッドより朝岡さんの隣がいい。
……なんて簡単には言えないけど。
シーツにくるまりながらふいに前を見ると
「───わぁ……!
朝岡さん、これ何?」
「───……ん?
………あぁ。
これはねー。作曲。」
「───作曲?」
「───そっ♪
これが今作ってる紅の新曲。」
「───ウソっっ!?!?
紅の曲って朝岡さんが作ってたの!?!?」
「そっ♪」
────カサッ。
ふいに一枚の楽譜を手渡され、じっと見入ってしまった。
───…綺麗な字……
正直、音楽は全然分からない。
でも───……
そんなあたしでも紙を走る音符に命が籠っている事くらいは分かる。
そうあの初ライブでも……
紅が奏でていた曲は、全て聞き入ってしまうものばかりだったのを覚えてる。
深くて、優しくて、強くて、繊細で───……。
───…そんな胸を打つような旋律と歌詞…。
あれを───…
「───全部?紅の曲を全部朝岡さんが作ってるの!?!?」
「………うん。
最後の段階で、アレンジに吾郎が入ったりもするけど。
それに紅の曲はもちろんやけど、他のバンドとか関係者とかにも作曲提供したりとか……色々。」
「……へぇぇっ……
すごいなぁ、あたし全然分かんないや……。」
「俺も最初は全然やったよ。」
「最初っていつ?」
「……ん~……。
吾郎に“音楽やろう”って言われてからやから………中学かな……?」
「え~!!あたしからしたら、中学からでもかなり昔だよ?」
「あはは、そうかな?
でも音楽やりだしてから、のめり込むの早かったのは確かやな。」
───…朝岡さんは同じように楽譜を見つめて。
「………………
“生きがい”になったのも………
早かったな……。」
何かを思い出しているかのように頬杖をついた。



