「───あ、朝岡さ───……っ!?!?」
──なっ、何なに!?!?
何で朝岡さんがここに!?!?
現実?!?!
それとも幻!?!?
「…………?」
一人パニック状態のあたしを見て、朝岡さんは首を傾げて笑っている。
────…本物、だ。
……窓から射し込む春の光に負けないくらい、朝岡さんの優しい笑顔。
「──…まだ大学春休みからさ、今日はこっち帰って来てん♪」
「……そっそうなんだ……」
朝岡さんの笑顔につられて、あたしもついつい笑ってしまう。
───何でかなぁ……?
朝岡さんの雰囲気って、言葉に出来ないくらいに、優しくて穏やかなんだよね……。
…今日も、大学が休みだからわざわざ来てくれたんだ……。
「…………」
───“あたしの為に”、
……じゃないよね?
………違うよね……?
………でも───…
朝岡さんの背中に“ありがとう”と呟く。
───…実のところ、
この春休みの間ずっと朝岡さんから連絡が入っていた。
“落ち込んでないか?”
“気晴らしにドライブ行く?”
……そんな、見えない気遣いと心遣い。
──…単純にその気持ちが嬉しかった。
───だけど………
まだ、こんな気持ちの整理が付いていない自分が嫌で。
もしかしたら、朝岡さんの優しさに甘えて利用してしまうんじゃないかって。
中途半端に期待させて朝岡さんを傷つけるような罪悪感さえあって……
──…うまく、言葉にするのは難しいけれど。
あたしはこの春休み中ずっと、朝岡さんからの誘いを断っていた。



