「───彩ーっ!!!!
早く早くっっ!」
「──あっ、うん!
じゃあいくね!」
ナナに呼ばれ、あたしはみんなに“じゃあね”と手を振り、急いでナナがいる場所に戻った。
「───あれ朝岡さんだよね?
いやぁ、遠くから見ても相変わらずすごい御光放ってるね、あの人は……。」
ナナはチラチラと朝岡さんを見てそう言い、
「……にしても類は友を呼ぶってホントだねー!
朝岡さんの周りにいる人達もすんごいね!!!!!
ヴィジュアル100点じゃんっ!あれ芸能人でもいけるよ!」
ミーハーナナは更に大興奮。
「……ん、んー。」
逆にあたしは返事を濁し、苦笑い。
しかしナナはニヤリと大胆不敵に笑い、
「───わざわざ卒業式にまで来てくれるなんてホント愛されてるねぇっ♪」
────……っ!
「───ちっ、ちっ、ちがうよ!!だって春休みだからって……」
「───分かってないなぁー彩は。
それだけ想ってくれてるって事だよ、きっと♪
ナナ的推理だけどっ♪」
「………………、」
「あは♪彩照れてる?照れてる?」
「~~~~…もうー!!!!!!
からかうのやめてよっ!!!!!」
「あははは♪
彩が恥ずかしがるのが面白いんだもーんっ♪
ほんと自分からノロケるの嫌いな奴だよねぇ、彩は。」
「……ほっといてよ…。」
……だって恥ずかしいじゃん………。
─────チラッ…。
「ねぇっ!オレ達も早く体育館行こうよ~っ!!」
「……吾郎、煙草が切れた……」
「……マリア、さすがにここには煙草売ってないよ。」
「…………」
少しだけ振り向いた瞬間、後ろの方で四人が輪になって喋っているのに
朝岡さんだけは振り向いたあたしに気付いたのか、
──────………
穏やかに微笑み、あたしに小さく手を振った。
─────ドキ…ン……
あたしも、また。
力が入らない手で朝岡さんに手を振り返した。
……きっと誰も気付いていないであろう、二人だけの秘密───…。



