「何なのよもーっ!!!ナナのやつ!!!!
人の事ハメるだけハメといて~!!!!」
──…短い始業式を終え、部室へと向かう途中。
あたしは独り言とは思えないくらい、ぶつくさと文句で口を尖らせていた。
───ナナのバカ!
絶対そんなんじゃないんだから!
今度言われたら、違うんだって、思いっきり涼しい顔して否定してやろう。
「…………」
───……だって。
だって、まだ。
次の恋とか、新しい恋とか、全然考えられないよ。
──…それが、
たとえ相手が朝岡さんだとしても……。
「………………
…………はぁ………」
──失恋して、数ヶ月。
“────彩。”
──…今もまだ、ふとした瞬間にあなたの欠片を思い出す。
思い出しては胸が切なく縮む。
「……ぶんちゃん……」
忘れるなんてまだ出来ない。
「……出来そうもないよ……。」
あたし、あなたを忘れてまた他の人を同じ様に好きになれるの?
時間が経てば忘れられる?
いつか、この気持ちに整理がつく時が来るのかな……?
「────…もうっ…!!」
────ガラッ!!!!
複雑な思いを吹っ切るかのように、あたしは部室のドアを勢いよく開けた。
───すると………
「────…彩」
確かにあたしの名前を呼ぶ声が聞こえるような……。
…………って、
ちょっと………。
いくら何でもぶんちゃんの幻聴ってヤバくない?
「……はぁ……」
暗い溜め息一つ付くと─…
「───彩!」
「えっ?!?!」
これにはさすがに現実だと悟り、パッと後ろを振り向く。
そこには──…
「──どないしたん?
……何や暗いやん。」
そう言って笑う、
朝岡さんの姿があった。



