学校に辿り着き、いつもよりザワつく教室に入ると
「───彩~っっっ!!!!
おっはよんっ♪」
「───ナナっっ!
おはようっ!」
先に登校していたナナがいつものように手を振って近付いてくる。
────“おはよう”。
3年間ずっと、朝一番に二人が交わしていた挨拶。
こうして学生時代に“おはよう”って挨拶を交わすことはもう一生ないんだろう。
───…寂しいな……。
「───どしたぁ?」
ナナは首を捻り、キョトンとして
「───………、
あぁ。うん…。
最後だもんねぇ……」
彼女も悟ったのか、ポツリとそう口にした。
卒業後、ナナは一人暮らしを始める事が決まっていた。
そして彩もまた、実家を離れて一人暮らしを始める。
───その距離はかなり離れていて、なかなか会えない距離だった。
「……やっぱさぁ、なかなか会えなくなるかなぁ……」
ポツリと出た彩の不安に、
「なぁに言ってんのさ~。
“これでもう二度と会えない”みたいな顔やめてよ~。辛気くさいなぁ~。」
ナナはおどけてケラケラと笑った。
「……うん……」
「だぁいじょうぶだって!ナナはそうそう彩の事忘れたりしないよ♪
───うちら親友でしょ?
彩が違うって言っても、ナナは勝手にそう思ってるよ♪」
「……ナナ……」
「だから泣くな♪
彩はいつまでもナナの胸の中でしつこく生きてるぞ♪」
「…何かその言い方やだよ…」
「あは♪」
───もう、ナナってば。
下手な言い回しして感動が薄れるじゃん。
……でもね、本当ナナがいてくれてよかったな。
明るくて陽気で、時々オヤジめいた事言い出すけど。
背が高くてスタイルいいわりに、お菓子に目がないっていうギャップ。
ハキハキしててサッパリしてて。
そんなナナと過ごした3年間は、楽しかったし一瞬だった。
彼女がいたから、高校生活フルエンジョイ出来たと思う。
一緒に笑って
一緒に泣いて
一緒に悩んで
怒る時はちゃんと怒ってくれた。
あなたはそんな陽だまりのような人だった。
ナナ……。
ありがとうね───…。



