───中学時代、自分を試すかのようにレベルが高いこの高校を受験した。
『───…桜井の成績じゃ、ちょっと厳しいかもしれないぞ。』
担任の先生にそう助言され、“諦めなさい”って言われたのに、何でか反発して受験した。
夜遅くまで目を擦って、
毎日毎日朝方まで参考書を見つめ続ける日々。
───“不可能”を“可能”に変えたかったんだと思う。
弱音吐いたり、結果が出なくて落ち込んだりする日々もあった。
だけど
自分が決めた事は曲げたくないっていう、何か頑固な一面があったんだよね。
………お陰で、
この手で合格を掴んだ時
“努力次第でなんとかなる”んだって、
“夢を掴むのは自分の努力にかかっているんだな”って
あの時確かにそう頷いて、自分自身で奇跡を築いた。
────…あれから三年。
今年もまた同じように春がやって来て、いつしかもう卒業の時。
「──…じゃあお母さん、いってくるね!」
「いってらっしゃい!
お母さんも後でちゃんと行くからね♪」
「うんっ!!
じゃ、いってきまーす!」
忙しそうに化粧を施しているお母さんに手を振って、玄関の扉を開けた。
─────チュンチュン。
青い空に白い鳥が飛び交い、優しい太陽の光がキラキラと注ぐ。
………この道も最後かぁ………。
土手に咲いているたんぽぽ、河原に咲いているつくし。
普段はあんまりちゃんと見てなかったけど、こうやってよく見ると綺麗だったんだなぁ……。
満員電車から見る景色は狭かったけど。
「…………」
───…そういや……
この道を二人で歩いていた時もあったな……。
よく自転車で二人乗りしたり、歩いたりしてたっけ。
感じた風の心地よさ。
冬に感じた手の温もり。
“学校に着きたくないなぁ”なんていう、小さなわがまま。
───全部、全部。
今でもリアルに覚えてる。
「……懐かし……。」
───今は、一人。
思い出が溢れる道を歩き、彩はそのまま学校へと向かった。



