──…しっ……
してやられた………!
朝岡さんにサプライズをするつもりが、思わぬ大誤算。
まっ……まさか自分がサプライズを仕掛け返されるとは………
まさかのまさかだよ。
もしかして、さっきのマリアの反応も………
……………
いや、間違いないな。
マリア、絶対渡し合いになるって勘づいてたんだ。
……だからあんなに笑顔だったんだ!
「・・・・」
思ってもいなかった展開に、思いっきりそれが表情に出ていたのだろう。
「………ふっ……」
────…くすくす…
こらえきれないのか、
朝岡さんは笑いを溢して。
「───俺の上を行こうにはまだまだやな。」
「…ひ、ひどっ…
これでも朝岡さんを驚かそうと必死で───…」
「……知ってるよ。
……ありがとう。」
────……ふわり。
赤面するあたしの頭を撫でる大きな手が、いつになく温かかった。
「……朝岡さん?」
「んー?」
「………これ……
ありがとう………。」
「────…うん♪」
……ほんと。
朝岡さんの上を行くにはまだまだかもしれない。
───…ねぇ、朝岡さん。
この年からかな?
新しい年を迎え、月が朧気に浮かぶ夜空の下で。
───…いつしか
「───朝岡さん。
お誕生日おめでとう。」
……そう言ったら
「………彩。」
「なに?」
「───明けましておめでとう。」
……こう返ってくるようになったね。
二つの意味の“おめでとう”を言い合える奇跡。
……来年も再来年もそのずっとずっと先も。
“こうやって、お互いにおめでとうって言い合えますように”って。
小さな小さな願いが芽生えた瞬間だった。



