「彩はホットミルクティー?」
「もっちろん★」
「了解♪」
────ガシャン!
朝岡さんに温かい缶のミルクティーを手渡され、景色がよく見渡せる場所へと移動した。
「寒くない?」
「うん、大丈夫♪
あっ、ねぇ見て朝岡さん!夜景綺麗だよ!!」
「おー♪けっこう穴場やねやなぁ、ここ。」
「ねー…綺麗だよね。」
───…まるで夜の暗闇に散りばめられた星屑みたい。
寒いせいか、景色までクリアに澄んで見える。
「……彩、今日は来てくれてありがとうな。」
穏やかで、優しい温もりを帯びた朝岡さんの声。
………いつからか、その声を聞くたびに安心している自分がいるのは何故だろう。
「……ううん。
こうやって初めて朝岡さんのお誕生日をお祝い出来てよかった……。」
……本当に初めてだもんね。
いつもはバースデーメール1通送ってただけだったもの……。
「……朝岡さんは何時に産まれたの?」
「……えー…………
せやなぁ、確か夜の1時半くらいやったと思う。」
────1時半……。
腕時計の時刻は、
現在深夜1時───……
「………半じゃん!!!!!
ジャストだよ朝岡さん!」
「え?………マジか。」
「───すっごーい!!!!」
偶然という言葉で済ませては、もったいないくらいの奇跡。
───…23年前の今、
朝岡さんっていう人間が産まれた奇跡。
「───…朝岡さん……」
「ん?」
「………お誕生日……
おめでとう──……」
「……ありがとう……」
この世界に生まれて来てくれたこと、
この世界に朝岡さんを生んでくれた、今は亡き朝岡さんのお母様。
………何だかね、
この時初めて誰もが“お誕生日”を迎えられる尊さをじっくり感じた気がするの。
酷な話だけど、みんながみんな笑顔で誕生日を迎えられるわけじゃないもんね。
世界中には、きっと誕生日を迎えたくても迎えられない人だって沢山いるもの──…。
その中で一日一日、
日々を刻める奇跡。
“おめでとう”って祝える奇跡。
“ありがとう”って言える奇跡。
当たり前なことに見えて、実は難しいことなのかもしれない。



