千悠くんは甘くて危険

「おかえり、日穏(かのん)。」


「お母さん!ただいまぁ!」


今日の夕飯はカレーだ。ふわりとカレーの香りが漂っている。私の好物でもある。


「さっき、若葉との話聞こえたんだけど…大丈夫?警察行く??」


目がマジじゃん。心配してるのは分かるんだけど、マジなのようちの両親。モンペになってないのがすごいくらい。


「ううん!大丈夫!体術習ってて良かったよ。」


「そう。女の子なんだから気を付けなさいね?」


ニッコリ笑うお母さんはお料理中だから片手に包丁を持っていて少しだけ怖かった。絶対怒らせたらやばいタイプの人間だよ。


ピコーンピコーンとスマホのメッセージアプリの着信音が流れ、相手の名前を見ると【さき】と表示されていた。私の親友工藤(くどう)咲(さき)のこと。


スマホを片手に自室に戻り、通話ボタンを押すと鼓膜を破る勢いの咲の声が聞こえた。


『あ!日穏?!大変なんだけど!!王子様が怪我してるの!』


王子様=美藤(みとう)くんだ。


それより…怪我?!