手首を掴んできた人の安否は確認せず、家まで懸命に走った。足も早いんです私。小柄なのですばしっこいし!体を動かす系であればお手の物なんです!


「はぁはぁ!ただいまぁあ!!」


家の玄関を開けて倒れ込むように家の床にダイブする。


「おかえりねぇちゃん。階段昇れない邪魔。」


階段近くで息を整えていると、弟の若葉(わかば)が教科書を持って自室に行こうとしているところだった。若葉は私と正反対の真面目な中2男子。高校も進学校と決めていてそれに向けて猛勉強中。


「ごめんっ。変質者に手掴まれて必死に逃げてきたから息切れが…!」


私の言葉を聞いた弟が家の固定電話を静かに取り、どこかに電話をかけ始めた。


「あ。父さん?なんかねぇちゃんが変質者に襲われたんだって。」


『なんだとぉおおおお?!うちの可愛い子供に手を出すなんてどこのどいつじゃ!シバキ倒してやんわぁああ!!』


父に電話をかけたと知った瞬間青ざめる。


父は…親バカなのだ。父に限らずもれなく母も。


「ちょっと若葉!手首を掴まれただけ!私が投げ飛ばしたから大丈夫!だから切って!」


「ねぇちゃんが殺したから大丈夫だって。うん。うん。僕はショートケーキで。ねぇちゃんは?変質者撃退記念でケーキ買ってくって。何がいい?」


変質者撃退記念…。


「ブルーベリーチーズケーキ。」


「もしもし父さん?いつものだって。うん。じゃあね。気をつけて帰ってきてね。」


ピッと電話を切り、若葉は私にグッドサインをして階段を上がって自室に入っていった。


私の家族は個性が強い。