Music of Frontier

何も見えていなかった。

視力を失った訳じゃない。目は、ちゃんと見えていた。

だけど、視界に映るものを、俺は何一つ認識出来ていなかった。

見なければいけないものに、目を向けようとしていなかった。

自分を大事に思ってくれてる人がいること。

自分の回復を願ってくれてる人がいること。

こんな自分を、まだ見捨てないでくれている人がいること。

何も見えていなかった俺は、ただ自分の悲しみの中に溺れるだけだった。

ただ毎日、病院のベッドの上に座って、時間に置き去りにされていた。

俺が空虚に過ごしている間も、時間は等しく平等に過ぎていた。

でも俺の時間は、ずっと止まったままだった。

そもそも、自分が生きてることも認識出来ていなかった。

あの頃の俺は…本当に、脱け殻だった。

心はとっくに死んでいるのに、何故か身体だけが、持ち主の意思に反して息をしていた。

自分では死んでるつもりなのに、身体は生きてるなんておかしな話だ。

生きてる…と言うか、自分以外の誰かに生かされているだけで、自分で生きようとしていた訳じゃない。

大体、俺はもう死にたいのだ。

死んだつもりなのだ。生きていないのだ。

だって、生きていたってもうしょうがないじゃないか。

生きることに対して、もう何の希望もなかった。

生きているのが…恥ずかしいくらいに。

何で俺はまだ生きてるんだろう。生きてたってしょうがないのに、生きてても何の価値もない人間なのに。

俺はこんなに、死にたいと思ってるのに。

何で、俺はまだ生きてるんだろう?