母のそんな気遣いが分かったから、俺は我が儘を言わず、母から離れた。
…頭痛、もっと酷くなりそうだな。
挨拶が終わった頃に、母のもとに戻ろう。
そして、さっさとこんなところから帰るのだ。
俺は渋々、同年代くらいの子供達が楽しげに話している輪に近づいた。
子供なら、少しは純粋にお喋りが出来るかと思いきや。
そこも、大人達のやり取りとそんなに変わらなかった。
金持ちの貴族の子女は、小さくても「お貴族様」だった。
今日の為に仕立てたらしいドレスやアクセサリーを見せびらかしたり、先月二週間の海外旅行に行ったとか、ヘリコプターをチャーターしてアエテルニタス山脈を遊覧したとか、そんな金持ち自慢の応酬。
醜くて吐き気がした。
だから何だよ、って思った。
君は何処に行ったの?なんて話を振られても、俺は返答に困った。
自慢じゃないが、俺は海外旅行になんて行ったことはないし、ヘリコプターもチャーターしたことはない。
曖昧に言葉を濁すと、彼らはにやっ、と嫌な笑みを浮かべた。
人を見下して馬鹿にする、成金野郎の汚ない笑みだった。
そこからは、俺を馬鹿にする悪口大会だ。
「え?今まで一度も海外旅行行ったことないの?」とか。
「その服いつ仕立てたの?え?去年?」とか。
「アシスファルト産の高級菓子店のケーキ食べたことある?ないの?」とか。
全部語尾に草生やしながら言われた。
めちゃくちゃムカついたし、悪いかよ!と叫びたくなった。
でもそんなことすれば、母が頭を下げなきゃならなくなる。
だから俺は、ぐっと堪えた。
曖昧に笑って、誤魔化しておいた。
この成金馬鹿共め。
俺は海外旅行なんかより、自分の屋敷の庭で母とガーデニングする方が好きだった。
アシスファルト産の高級ケーキより、母がたまに作ってくれる手作りケーキの方が好きだった。
貧乏人と言われようが、マザコンと言われようが、こんなことしか自慢するものがない憐れなガキ共より、よっぽどましだ。
俺はそう思った。
散々俺を馬鹿にして満足したのか、ガキ共が俺を無視して別の会話をし始めたのを良いことに。
俺は、そっとその場を離れた。
こんな奴らと、話すことなんて何もない。
…頭痛、もっと酷くなりそうだな。
挨拶が終わった頃に、母のもとに戻ろう。
そして、さっさとこんなところから帰るのだ。
俺は渋々、同年代くらいの子供達が楽しげに話している輪に近づいた。
子供なら、少しは純粋にお喋りが出来るかと思いきや。
そこも、大人達のやり取りとそんなに変わらなかった。
金持ちの貴族の子女は、小さくても「お貴族様」だった。
今日の為に仕立てたらしいドレスやアクセサリーを見せびらかしたり、先月二週間の海外旅行に行ったとか、ヘリコプターをチャーターしてアエテルニタス山脈を遊覧したとか、そんな金持ち自慢の応酬。
醜くて吐き気がした。
だから何だよ、って思った。
君は何処に行ったの?なんて話を振られても、俺は返答に困った。
自慢じゃないが、俺は海外旅行になんて行ったことはないし、ヘリコプターもチャーターしたことはない。
曖昧に言葉を濁すと、彼らはにやっ、と嫌な笑みを浮かべた。
人を見下して馬鹿にする、成金野郎の汚ない笑みだった。
そこからは、俺を馬鹿にする悪口大会だ。
「え?今まで一度も海外旅行行ったことないの?」とか。
「その服いつ仕立てたの?え?去年?」とか。
「アシスファルト産の高級菓子店のケーキ食べたことある?ないの?」とか。
全部語尾に草生やしながら言われた。
めちゃくちゃムカついたし、悪いかよ!と叫びたくなった。
でもそんなことすれば、母が頭を下げなきゃならなくなる。
だから俺は、ぐっと堪えた。
曖昧に笑って、誤魔化しておいた。
この成金馬鹿共め。
俺は海外旅行なんかより、自分の屋敷の庭で母とガーデニングする方が好きだった。
アシスファルト産の高級ケーキより、母がたまに作ってくれる手作りケーキの方が好きだった。
貧乏人と言われようが、マザコンと言われようが、こんなことしか自慢するものがない憐れなガキ共より、よっぽどましだ。
俺はそう思った。
散々俺を馬鹿にして満足したのか、ガキ共が俺を無視して別の会話をし始めたのを良いことに。
俺は、そっとその場を離れた。
こんな奴らと、話すことなんて何もない。


