Music of Frontier

もう一つの問題は、汚い話になるが、お金の問題だ。

貴族のパーティーとは、何やらきらびやかなものを想像するかもしれないが。

実際はそんなことはない。俺に言わせれば、貴族のパーティーは見栄と意地の張り合いだ。

以前俺がそう言うと、母は何も言わずに苦笑いしていた。

パーティーに合わせて服を新調するのは当然だし、服だけではなく、身に付けるアクセサリーもそれなりのものを用意しなければならない。

流行遅れの衣装や、安物を着ていこうものなら、目の肥えたご婦人方に目敏く見つけられ、ひそひそと指を差される羽目になる。

そんなことをされれば、貴族としての権威は地に堕ちたも同然だ。

分かりやすく言うと、

「見て、あの人の服。何年前のかしらww?」

「あら本当。あそこの家も大変ねぇwwクスクスww」みたいな。

まさかと思うかもしれないけど、これ本当。マジでこんな感じだから。

貴族の腐敗、ここに極まれり。

俺からすれば、何年前の服だろうと、少々安物だろうと、清潔にしてればそれで良いと思うのだが。

そうは行かないのだろう。貴族様にとっては。

母に言わせると、「見栄を張るのも貴族のお仕事」なのだそうが。

母も俺と同様、そんなもの、取るに足らない下らない意地の張り合いだと思っているに違いない。

だって実際下らないだろう。相手の着ている服なんて、そうじろじろと見るものではない。

それでも、お貴族様にとっては重要なことなのだ。母の言う通り、身を飾り立てるのも貴族の仕事なのだ。

服装は、ステータスの象徴だから。

つまり何が言いたいのかと言うと、パーティーに出るならそれなりの衣装を用意しなければならない訳で。

それを用意することは、エルフリィ家にとっては大変困難だった。

普段着ではない。パーティードレスなのだ。人様に見せる、それもマグノリア家のパーティーに着ていくものなのだから、バーゲンで買った50%オフのドレスを着ていく訳にはいかない。

大体そんな服装で行ったら、主催者であるマグノリア家にも失礼だ。

しかし我が家の財政状況では、新しい衣装を用意するのも簡単ではなかった。

情けない話ではあるが、それがエルフリィ家の状況だったのだ。

それでも、断る訳にもいかないのだから、是が非でも用意しなければならない。

生活を切り詰め、家財道具や何やかやを売ったりして、なんとか見劣りしない程度の服装を整え。

あとは、母が当日、体調を崩さないことを祈るばかりだった。