Music of Frontier

…この、難しそうな顔を見ると。

…やっぱり、駄目か。

直接顔を会わせないというだけで、やっていることは面会とあまり変わらないもんな。

今のルトリアはまだ、外部と接触させない方が良い。

そういうことなのかもしれない。

「…済みません。困らせるようなことを言って…」

俺は謝って、引き下がろうとした。

しかし。

「いや…良いかもしれない。やってみよう」

意外にも、エインリー先生はOKを出してくれた。

俺ははっとして顔を上げた。

「本当ですか!良いんですか?」

「うん、良いよ。ただし…初めは小さいメモ用紙くらいにしてね。これくらいの」

エインリー先生は、指で小さな四角を作った。

そのサイズだと、本当にただのメモ用紙だ。

でも、確かに文字が書ける。ルトリアに伝えられる。

「それから…申し訳ないんだけど、そのお手紙…ルトリア君に渡す前に、まず私が読ませてもらうね。迂闊なことを書いてしまうと、ルトリア君を余計に傷つけてしまうかもしれないからね」

「はい」

「ごめんね。一度私が検閲して、これなら大丈夫だと判断したら、それを渡すことにするよ」

「分かりました」

手紙を読まれるのは恥ずかしいが、この状況だと致し方ない。

届けてもらえるだけでも御の字だ。

「それから、返事は期待しないで。手紙を渡すことは出来るけど、読ませることを強要は出来ないから」

「…そうですね」

エインリー先生が手紙を渡してくれたとしても、それをルトリアが読んでくれる保証は何処にもない。

読んでもらえないまま、床にヒラヒラ落ちてしまう可能性は充分ある。

それどころか、もらった瞬間、クシャッ、ポイッ、の可能性もある。

それでも良い。何も出来なかった頃に比べたら、何か出来るというだけで充分だ。

「構いません。手紙…届けてくださるのなら」

「うん。ありがとうね、ルクシー君。どうか、お願いだから…彼を見捨てないであげてね」

「勿論です」

家族にまで見捨てられ、養護施設の職員も見舞いになど全く来ない。

ルトリアを気にかけているのは、俺だけだ。

その俺にまで見捨てられたら、ルトリアは完全に一人ぼっちになる。

エインリー先生は、それを危惧しているのだろうけど。

その心配は無用だ。

俺がルトリアを見捨てるなんてこと、絶対に有り得ないから。