Music of Frontier

問題は、それだけじゃない。

足だ。ルトリアの左足。

これだけは、どうしてあんなことになったのか分からない。

医者もよく知らないそうだ。

どうやらルトリアは最初、帝都のもっと大きな病院にいたそうで。

そこから転院して、今の△△病院に来たそうだ。

転院してきたときには既に左足を怪我していて、怪我の原因はカルテにも書いていなかったらしい。

だから、左足の怪我をしたのが、退学する前なのか、退学した後なのかは分からない。

いずれにしても確かなのは、ルトリアはもう、帝国騎士にはなれないということだ。

貴族じゃなくても、騎士官学校を出ていなくても、なろうと思えば帝国騎士にはなれる。

その場合、特に役職に就く訳でもない…一般騎士にしかなれないけど…。

少々頭が足りなくても、学歴がなくても、家柄がなくても帝国騎士にはなれる。

でも、それは五体満足で健康な人間に限られる。

何らかの身体的・精神的な障害を持っている者は、入団時の身体検査で落とされる。

指が一本ありませんとか、ちょっと難聴気味です、くらいならまだ見込みはある。

しかし、杖をつかなければ歩けません、では無理だ。

話にならない。

つまりルトリアは、貴族とか騎士官学校とかは関係なく、もう帝国騎士になることは出来ないのだ。

身体に不可逆的な障害を負った今、ルトリアには帝国騎士団に入ることは出来ない。

今までずっと、帝国騎士になる為に生きてきたルトリア。

それが出来ないならお前に生きてる意味はない、とまで言われたルトリアは。

帝国騎士になれないと分かった今、文字通り生きる意味をなくしてしまった。

彼がこの病院に閉じ込められ、面会さえ許されないのは、それが原因だった。