Music of Frontier

日を改めて、俺はルトリアがいる病院に向かった。

総合受付でルトリアの名前を告げると、お調べ致しますので少々お待ちください、と10分くらい待たされた。

問題ない。待つのは昨日で慣れた。

それにしても、ルトリアは何で病院にいるんだろう。

ルトリアが帝国騎士官学校をクビになって三ヶ月以上。

その間に、何か怪我とか…病気をしたのだろうか。

…大丈夫かな。ルトリア。

うっかり交通事故に遭って骨折して…。だったら良いのだが。

まさか、悪い病気になった…なんて訳じゃないだろう。

無実の罪で帝国騎士官学校をクビにされ、家族にまで見捨てられて、おまけに悪い病気になったなんて悲惨過ぎる。

ルトリア…無事なら良いんだが…。

悶々と考え込んでいると、総合受付のお姉さんに呼び出された。

ルトリアは五階にいるので、五階の受付に行くようにと。

あぁはい、分かりましたとエレベーターで五階に向かう。

ところで五階って、何科のフロアなんだろう。

総合病院は、各階ごとに内科とか産婦人科とか整形外科という風に分かれている。

この階が何科か分かれば、ルトリアが何故入院しているのか、ある程度推測出来る。

そう思った。

エレベーターを降り、受付に向かう。

そこには、『精神科 受付』と書いてあった。

…え。

一瞬、俺は呆然として立ち尽くした。

…精神科?精神科って…何するんだ?

戸惑いながら、俺は受付の職員に声をかけた。

「あの…。ルトリア…。ルトリアのお見舞いに」

マグノリアの名前を取り上げられた今のルトリアが、どう名乗っているのか知らないが。

名字はともかく、ルトリアという名前は変わっていないはず。

少々お待ちくださいね、とまたしても10分ほど待たされ。

ようやく呼び出されたものの。

受付の職員は、申し訳なさそうにこう言った。

「申し訳ないのですが…。ルトリアさんに面会は出来ません」

「え…」

…面会、出来ない?

ここにいるのは確かなんだろう?それなのに面会出来ないって、何だそれは。

「担当医から面会許可が降りてないんです。残念ですが…」

「面会許可…って。何で駄目なんですか?」

俺はこの頃、精神科の病院で、面会を拒否されるということが何を意味するのか、分かっていなかった。

これから先、痛いほど思い知らされることになるのだが。

「今は…まだ不安定ですから。誰とも会わせられないんです。治療が進んで、もう少し落ち着いたら面会出来ますから」

受付の職員は、言葉を選びながらそう言った。

…不安定…って。

誰とも会わせられないって…。何なんだ、それは。

俺は、何も分かっていなかった。

ルトリアの身に、何が起きているのか。

彼が今、どれだけ苦しんでいるのか。

とにかく俺は、その日もルトリアには会えなかった。

それどころか、翌日も翌週も翌月も、ルトリアに会うことは叶わなかったのである。