Music of Frontier

俺は、帝都にある寂れた児童養護施設に足を運んだ。

まだ未成年のルトリアは、そこに住んでいると聞いたから。

それなのに。




「…え。いない…?」

玄関口で会った職員に、「ルトリアに会いに来た」と言うと。

「あぁ、責任者呼ぶからちょっと待って」と言われ、10分くらい放置され。

ようやくやって来た責任者とやらに、「まずこれに名前書いて」と、面会希望書みたいなのを書かされ。

「お前誰?どういう関係で会いに来たの?」と、怪しげな目でじろじろ見られ。

「友達です」と正直に答えたのに、向こうはいかにも信じてなさそうな、不審者を見る目。

下手に「家族です」と言うよりは信用出来るだろう。

記入した面会希望書を渡すと、またしても「担当者を呼ぶからちょっと待ってて」と、放置され。

その間、この施設の子供達が、廊下から俺をじろじろを眺めていた。

ルトリアいないかな…。と、俺も視線をきょろきょろさせてみたのだが。

やっぱり見当たらなかった。

と言うか、一体何分待たされるんだ。

そして20分近く待たされた挙げ句。

冒頭に戻る。

「いないんですか…?」

「えぇ、いません」

ルトリアの担当者という職員は、やたらと化粧の濃い中年の女性で、とても疲れたような顔をしていた。

多分、職員の数と受け入れている子供の数が、釣り合っていないのだろう。

ここの職員は、誰もが忙しそうだった。

いや、そんな孤児院事情はさておき。

折角ここまで来て、30分以上待たされたのに、ルトリアがいない?

「でも…ここにいるって聞いて…」

マグノリア家のあの執事、まさか嘘ついたのか?

それとも、適当なことを言ったのか?そんな馬鹿な。

「確かに籍はうちにありますよ。でも、本人はここにはいません」

「え…?じゃあ、ルトリアは何処にいるんですか」

「病院ですよ、病院。帝都の外れにある△△病院って知ってる?そこに入院してるの」

「…!?」

その病院なら、聞いたことがある。

帝都ではそこそこ大きな総合病院だ。

「何で…ルトリアがそんなところに?」

「さぁ…。よく分からないけど、まだ退院しちゃ駄目だって言われてるから」

女性職員は、どうでも良さそうにそう言った。

この施設が、子供達をどのように扱っているのかよく分かった。

「気になるなら、病院の方に行ってきたら?」

「…」

何でそんなに投げやりなんだ、お宅で預かってる子供だろう、と言ってやりたかった。

でも、この人にそんなことを言うのはお門違いだった。

「…分かりました。ありがとうございます」

こんなところで言い合いなんてしたくなかった。

遥々こんなところまでやって来て、しかも30分以上待たされて、やっぱりここにはいませんでした、なんて言われて腹立たしくはあるが。

八つ当たりしている暇があったら、ルトリアに会いに行きたかった。

…何だか、色んな場所をたらい回しにされている気分だ。

俺は女性職員に頭を下げ、ルトリアがいるという総合病院を目指した。