『R&B』事務所の廊下を、俺は急ぎ足で歩いていた。
今日の午後は、事務所の会議室で次の動画のMVについて打ち合わせすることになっていたのである。
午前の仕事が少し押してしまって、既に時間はギリギリ。
ユーリアナさんは優しいから、「焦らないで大丈夫ですよ」と言ってくれたが。
会議室で皆を待たされるのは気が引ける。やはり、出来るだけ急ぐべきだろう。
事務所に戻ってきた時点で、会議時間まであと五分。
よし、急げば間に合う。
あとはエレベーターがタイミング良く来てくれるかどうかに懸かっている。
エレベーターって気まぐれだよね。急いでるときに限って物凄く待たされる。
逆に、急いでないときは「あれ?もう来た」って感じに、案外すぐ来たりするのだ。
廊下の突き当たりにあるエレベーターを目指して小走りに駆けていると。
「…あっ!」
丁度、エレベーターが一階に到着し、誰かが乗り込んで上に向かおうとしていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!乗る!乗りまーす!」
今にも閉まろうとしていた扉に向かって、俺は腕をぶんぶん振りながらアピール。
ここでタイミングが悪いと、無情にも扉は閉まり、そのまま置いていかれるのだが。
中に乗っていた人が、「開」ボタンを押しっぱなしにして、俺が乗るまで待っていてくれた。
有り難や。
急いでエレベーターに飛び乗り、ふぅ、と一息。
間に合った。
「ありがとうございま…」
「あら。あなたルトリアさんじゃないですか」
「!?」
エレベーターに乗っているのは、てっきり、事務所スタッフの誰かだと思っていた。
しかし、違っていた。
狭いエレベーターの中に、妖艶に香るオリエンタルな香水の香り。
吸い込まれそうなほど真っ黒なコート。黒髪に、黒い蝶の髪飾り。
スラックスもブーツも全部が真っ黒で、それなのに左胸についた薔薇のブローチだけは青で、まるで何かを象徴しているように見えた。
こ、この人は…!
「うふふ。奇遇ですね」
妖艶に微笑むその姿に、俺は思わずくらり、とした。
今日の午後は、事務所の会議室で次の動画のMVについて打ち合わせすることになっていたのである。
午前の仕事が少し押してしまって、既に時間はギリギリ。
ユーリアナさんは優しいから、「焦らないで大丈夫ですよ」と言ってくれたが。
会議室で皆を待たされるのは気が引ける。やはり、出来るだけ急ぐべきだろう。
事務所に戻ってきた時点で、会議時間まであと五分。
よし、急げば間に合う。
あとはエレベーターがタイミング良く来てくれるかどうかに懸かっている。
エレベーターって気まぐれだよね。急いでるときに限って物凄く待たされる。
逆に、急いでないときは「あれ?もう来た」って感じに、案外すぐ来たりするのだ。
廊下の突き当たりにあるエレベーターを目指して小走りに駆けていると。
「…あっ!」
丁度、エレベーターが一階に到着し、誰かが乗り込んで上に向かおうとしていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!乗る!乗りまーす!」
今にも閉まろうとしていた扉に向かって、俺は腕をぶんぶん振りながらアピール。
ここでタイミングが悪いと、無情にも扉は閉まり、そのまま置いていかれるのだが。
中に乗っていた人が、「開」ボタンを押しっぱなしにして、俺が乗るまで待っていてくれた。
有り難や。
急いでエレベーターに飛び乗り、ふぅ、と一息。
間に合った。
「ありがとうございま…」
「あら。あなたルトリアさんじゃないですか」
「!?」
エレベーターに乗っているのは、てっきり、事務所スタッフの誰かだと思っていた。
しかし、違っていた。
狭いエレベーターの中に、妖艶に香るオリエンタルな香水の香り。
吸い込まれそうなほど真っ黒なコート。黒髪に、黒い蝶の髪飾り。
スラックスもブーツも全部が真っ黒で、それなのに左胸についた薔薇のブローチだけは青で、まるで何かを象徴しているように見えた。
こ、この人は…!
「うふふ。奇遇ですね」
妖艶に微笑むその姿に、俺は思わずくらり、とした。


