Music of Frontier

更に。

「おはようルトリア」

「あ、ベーシュさんおはようございます」

遅ればせながら、ベーシュさんが到着。

そして、ベーシュさんも勿論。

「今日誕生日だよね。おめでとう」

「ありがとうございます、ベーシュさん」

覚えててくれたんだね。ありがとう。

『frontier』の皆は、今年も全員覚えててくれたってことだな。

こんなに嬉しいことはない。

「私、ルトリアにプレゼント持ってきたんだよ。あげる」

「あ…はい。ありがとうございます」

ベーシュさんからプレゼントもらっちゃうなんて。

一部の過激なベーシュさんファンにバレたら、激怒されること不可避だな。

しかし、ここで問題がある。

実は去年も、その前も、ベーシュさんからはプレゼントを頂いているのだが。

こう言ってはなんだが、その、ベーシュさんのプレゼントって…。

「…」

「…」

「…」

ちらっ、と男衆三人を見ると、三人共敢えて視線を逸らしていた。

そんなー…。こっち見てよー。

…まぁ、目を逸らそうとする、その気持ちは…分からないことはない。

プレゼントもらっておきながら、大変失礼なのは分かっている。

一部の過激なベーシュさんファンからすれば、「ベーシュちゃんからプレゼントをもらっておきながら、何を贅沢な!」と激怒されることも分かっている。

しかし、それでも言わせて欲しい。

実は、ベーシュさんのプレゼントって…。

「…ベーシュさん。今年のプレゼントは、何なんですか?」

「開けて良いよ?」

「…では、お言葉に甘えて」

ここまでの前振りで、もう大体分かっていると思うが。

ベーシュさんのプレゼントは…その…ちょっと、センスが。

人と少し変わっていると言うか…大変個性的と言うか。

…南無三。

俺は心の中でそう呟いて、今年のベーシュさんからのプレゼントを開封してみた。

すると、中には。

「…」

…抱き枕であった。

…超リアルな海苔巻きの。

「…ベーシュさん。何で海苔巻き?」

「美味しそうかなって思って」

…うん。美味しそうだね。

寝てる間にうっかりがぶっと食べちゃいそうなくらいリアル。

「…要らなかった?」

「い、いえ。とんでもない!凄く嬉しいですよ」

少なくとも…去年よりは嬉しい。

ちなみに去年のベーシュさんからのプレゼントは、肉だった。

ただの肉じゃない。なんとうさぎの干し肉だ。

あのとき、人生で初めてうさぎを食べたよ。

ルクシーと二人で。戦々恐々としながら。

それを思えば、今年のプレゼントは随分と平和だ。

「あ、ありがとうございますね、ベーシュさん」

「うん。喜んでくれて良かった。その海苔巻き、私だと思って大事にしてね」

残念ながら、ベーシュさんとは似ても似つかない海苔巻き抱き枕だが。

それでもベーシュさんからの愛のこもったプレゼント。大事にさせてもらおう。