Music of Frontier

ルクシーの次に祝福をくれたのは、ルクシーのお母様だった。

「おはようルトリア君。今日誕生日よね。おめでとう」

「ありがとうございます」

ルクシーのお母様まで覚えていてくれるとは。

うちの両親なんて、我が子の誕生日すら忘れてしまうというのに。

「今日もお仕事なのよね?」

「えぇ、そうですね」

「じゃあ、夕食のときに誕生日ケーキ焼いて待ってるわね。チョコのケーキで良い?」

「ふぉぉ…!勿論です。ありがとうございます…!」

チョコケーキって、俺の一番好きなケーキじゃないか。

異論があるはずがない。

しかも。

「それと、プリンも用意しておくわね」

なんてことだ。スイーツが加速する。

「うわぁぁぁ…!糖分が…糖分が俺を待っている…!まだ朝食前なのに、夕食が待ちきれない…!」

「落ち着けルトリア」

「それと、今日の朝食はフレンチトーストにしてみたのよ。メープルシロップたっぷり入れて…」

「あぁぁぁぁ」

「…壊れたな…」

朝から甘々のフレンチトーストを食べて良いって、それどんなご褒美ですか。

起きて一時間足らずで、幸せが一杯。

誕生日万歳。

「それから…あなたのお姉さんと、病院の先生からもプレゼントが送られてきてるわよ」

「ふぇ?」

姉と…。病院の先生。

病院の先生と言うのは、エインリー先生のことである。

ただの患者の一人でしかない俺の為に、エインリー先生は毎年バースデーカードを送ってくれる。

とても嬉しい。

それから…今年は、姉からも。

「本当だ…。姉さんから、プレゼントが…」

「…?どうした、ルトリア」

姉さんから送られてきたというプレゼントを開け、俺は身体を硬直させた。

こ、これは…!

「こ、これ、アシスファルト産の稀少なお砂糖だけを使って作ったという、幻のキャンディー…!それにこれは、王室ご用達高級チョコの詰め合わせじゃないですか!なんてことだ!幸せが…この一箱に詰まってる…!」

「…良かったな、ルトリア」

ルクシーは呆れたように溜め息をつき、ルクシーのお母様は、にこにこと微笑ましそうに見ていた。

「ルクシーも一緒に食べましょうね!キャンディーとチョコ!」

「はいはい…」

なんて甘い、素晴らしいプレゼントであることだろう。

これでまだ、今日が始まって一時間足らずの出来事なのだから、今年の俺の誕生日、大丈夫だろうか?