Music of Frontier

帝都に来たばかりのエルは、色んなバイトを掛け持ちして生活費を稼ぎながら、ずっとやりたかった音楽を本格的に始めた。

わざわざ音楽教室に近いアパートを借り、さて何の楽器をやろう、と考えたところ。

別に楽器なんて何でも良かったのだが、エルはいくつかの楽器の中で、ドラムを選んだ。

何でかと言うと、ドラム教室が一番時間の都合が良かったからである。

面白くなかったら、エレキギターやベースに転向すれば良いや、なんて軽く考えていた。

どうしても楽器の才能がなかったら、ボーカルやれば良いじゃん、とまで思っていた。

ルトリーヌと比べたら、エルなんて音痴も良いところだけどな。

しかし、案外エルにはドラムが馴染み、しかもずっと我慢させられていたぶん、「やっと自分の好きなことを出来る!」と思って、日夜音楽教室に通っては、ドラムを練習しまくった。

実家にいた頃には味わったことのない解放感に、エルは大満足であった。

もし音楽で生きていけなくても、このまま実家とは縁を切って、一人気ままに生きていけたら良いなぁ、なんて思うくらいに。

そんな日々がしばらく続き、ドラムもそこそこ上手くなったし、そろそろバンドメンバー集めて、本格的にバンド活動始めたいなぁ…と。

思い始めていた頃に、エルがそれまで勤めていたハンバーガーショップが潰れた。

他にもアルバイトは掛け持っていたが、それだけだと心もとないので、仕方なく別のバイト先を探した。

そこで見つけたのが、ミヤーヌの家が経営している楽器専門店だった。

バイト募集雑誌で見つけ、エルは特に考えずに面接を受けることにした。

楽器専門店。音楽好きのエルには持って来いじゃん。

なんて、安直な考えだった。

だが、この安直な考えが、後に『frontier』というバンドを生み出したのである。

面接に行ったところ、幸いすぐに採用され、じゃあ来週から宜しく、と言われた。

で、その楽器専門店で働き始めてすぐ、エルはミヤーヌと出会った。

これが『frontier』結成の、第一歩である。