Music of Frontier

家が駄目なら、じゃあ学校ではどうか。

家ではボッチだが、実は学校ではたくさんの友達がいて、先生受けも良くて、毎日楽しく学校に通っていた…。

…なんて、言えたら良かったのだが。

そんなご都合主義な話があるか。

家で駄目なら、学校でも駄目ってのが相場だよ。

現実なんてそんなもんだ。

家でボッチなように、学校でもエルはボッチだった。

友達…と呼べる友達は、一人もいなかった。

寂しい奴だよ。全く。

何で友達、出来なかったんだろうな?実は自分でもよく分からない。

自分から周りを遠ざけた覚えはないんだがな。

ミヤーヌみたいに、オカマとかニューハーフと言ってイビるネタがあった訳でもない。

エルの場合、成績悪くて運動音痴ってこと以外に、これと言って人に避けられなきゃならない要素はなかったと思うのだが。

学校を卒業して十年たった今、考えてみるに。

そういう、地味で目立たないところが、むしろ人を遠ざけていた理由だったのかなって。

特に害がある訳じゃないけど、でも傍にいると邪魔、みたいな。

こちらから話しかけるってことがあんまりなかったから、何考えてるか分からなくて避けられてたのかも。

それはあるだろうな。あの頃のエルは、かなり無口な子だった。

家でもあんまり喋らなかったから。だって家で何か言うと大抵、「また我が儘が始まった」とか、「口答えした」って言われるし。

二言目にはすぐそんなこと言われるんだから、そりゃ喋りたくもなくなる。

ようは、お前は黙っとけと。可愛くないんだから喋るなと。

間接的に、そう言われていたんだろう。

だから学校でもあんまり喋らなかった。下手なこと言って嫌われるくらいなら、黙ってた方がましだろう?

お陰で、エルは「何考えてるか分からない奴」認定され、触らぬ神に祟りなしとばかりに、人から避けられていた。

従って友達もおらず、休みの日でも遊びに行く相手もいなくて、家にぽつーんと一人で過ごしていた。

超分かりやすく端的に言うと、エルは陰キャだった。

前にこの話をミヤーヌにすると、ミヤーヌは真剣な顔で、「大丈夫だ。俺も陰キャだったから」と言われた。

ミヤーヌの陰キャとエルの陰キャは、陰キャの中でもまた別のタイプじゃないかと思う。

ミヤーヌは陽キャを内に秘めた陰キャだが、エルは真性の…って、そんな陰キャ談義はどうでも良いんだ。