Music of Frontier

兄みたいに足が速くなりたくて、自分なりに練習してみたり。

姉みたいに頭が良くなりたくて、たくさん教科書を読み込んで勉強したり。

妹のように美人に…なることはさすがに出来ないから、弟がいつもどんな風に大人に甘えるかを研究して、それっぽく振る舞ってみたり。

子供ながらに、色々と努力をした。

努力すれば、少しでも両親が振り向いてはくれないかと。

でも、駄目だった。

エルのやることは、いつも、何から何まで裏目に出ていた。

つまりは、やっぱり要領が悪いのだ。

おまけに何やらせても、からっきし才能がない。

エルの運動音痴っぷりは、ちょっとばかり練習したくらいでは克服出来なかった。

頭の方もそう。エルの頭はかなり残念な頭だったようで、少々勉強したくらいでは、とても姉には追い付けない。

それどころか、クラスの中で上位に入ることすら出来ていなかった。

成績はいつも下の方か、良くても中間くらいをふらふらしていた。

弟みたいに親に甘えようとしても、両親はそもそもエルを可愛いなんて思っちゃいないから、甘えてもむしろ逆効果で、鬱陶しがられて終わり。

そりゃまぁ、悔しかったもんだ。

おまけに、エルは他の兄弟とも仲が良くなかった。

うちの家は、兄弟仲は比較的良い方だった。でも、エルだけは例外だ。

エルだけは、どの兄弟とも不仲だった。

何でだったんだろう。自分でも理由はよく分からない。

エルの方が嫌っていたと言うより、向こうがエルを嫌っていた気がする。

多分、両親から受ける愛情の差を、兄弟も機敏に感じ取っていたのだ。

だから、エルに接するときは、無意識に両親がするのと同じように、冷たく接していたのかもしれない。

あるいは、両親がエルのことを「この子は手がかかる、可愛くない子だ」と繰り返し言っていたせいで。

兄弟達も腹の中で、エルのことを馬鹿にしていたのだろう。

馬鹿にされても文句言えないようなスペックのガキだったしな。エルは。