Music of Frontier

ところで、我が家は子沢山な家庭だった。

今時のご時世では、割と珍しいタイプだな。

エルの上には兄と姉が一人ずつ、で、エルの下には妹と弟が一人ずついた。

全部で五人兄弟。

そして、五人のうち一番みそっかすなのが、エルだった。

両親にとっては、エルは本当に出来損ないだった。

と言うか、兄弟の中で一番、要領が悪かったのだ。

一番上の兄はスポーツが得意で、足が凄く速かった。

それに両親にとって初めての子供だから、思い入れが強かった。

二番目の姉は、スポーツは出来ないけど、代わりに頭が良くて、成績はいつもクラスで一番だった。

両親にとっては、大層誇らしい子供だったことだろう。

エルの下の妹は、スポーツもあんまり得意じゃないし、勉強もそれほど出来た訳じゃないけど。

でも愛想が良くて美人だった。だから可愛がられた。特に、父の一番のお気に入りだった。

一番下の弟は、これまた勉強もスポーツもいまいちだったが。

彼は大人に甘えるのが上手かった。末っ子ってのは大抵何処でもそうだろう。

で、そんな優秀な上二人と、要領の良い下二人にサンドイッチされたエルはと言うと。

兄弟がそれぞれ持つ良いところを、全部裏返して出来上がったのがエルだった。

スポーツは下手くそで、象のように足が遅くて、徒競走ではいつでもぶっちぎりのビリ。

頭も悪くて、生涯において試験というもので50点を越えたことはあんまりない。それほどアホだった。

妹のような美人ではないし。

今でこそ、まぁフツメンレベルに達してると自惚れてるが。

子供の頃はいつでも仏頂面で、ブスッとしていたから、愛想はなかった。

かといって一番下の弟のように甘え上手ではないし、むしろ甘え下手だった。

たまに甘えようとしても、逆にうざがられる始末だった。

これだけ聞けば、いかにエルが出来損ないの子供だったか、分かることだろう。

両親にいまいち愛されていた自覚のないエルだが。

これだけ何もかも出来損ないだったら、そりゃ愛されないのも無理ないわな、と思う。

これでもチビの頃は、「何で自分だけ大事にされないんだぁぁ」と不満タラタラだったが。

親だって人間なんだから、五人も兄弟がいれば、一人ぐらい可愛くないのがいても仕方ないだろう。

とはいえ、それは今だからこうして納得出来ているのであって。

これでも、昔は結構このせいで苦労した…と言うか、辛い思いをしたものだ。