Music of Frontier

ルトリアが加入したときもそう。

ルクシー曰く、ルトリアは精神病院に入院していて、面会も許されないほど症状が重かった。

その人をメンバーに引き入れたい、と言うルクシーに、俺は反対はしなかったものの、内心凄く心配だった。

手首に一杯傷をつけた、メンヘラじみた人が来るんじゃないかと気が気ではなかった。

不安に思いながらも、エルーシアと共に見舞いに行ってみたところ、ルトリアは意外なほどに普通の人だった。

何で入院なんかしているのか不思議なくらいだった。

今となれば、ルトリアがどうして入院していたのか分かるが…あの頃は、深く追及しようとも思わなかった。

精神的に弱い面はあったし、あの頃のルトリアは自分に自信がなくてネガティブ発言も多かったが。

話してみれば、真面目だし、常識も通じるし、すぐに打ち解けることが出来た。

あれで元貴族だというのだから、ルトリアは低姿勢にもほどがあるだろう。

それから、ルトリアの後に加入したベーシュ。

ベーシュは一番心配していた。

ギターが上手いのは知っていたが、彼女は基本的に無愛想で、あまり人を寄せ付けるタイプではなかった。

俺が言うな、って話だが。

しかも男ばかりのメンバーの中で、ただ一人の女の子。

上手くやっていけるのか、心から心配だった。

しかし、確かにベーシュは表情が分かりづらいし、たまにちょっとずれたことをする子ではあるが、話は普通に出来るし、根は優しい良い子だった。

何故かルトリアがベーシュの扱いを一番心得ていて、そのルトリアを緩衝材に、ベーシュは『frontier』に馴染んでいった。

今では、もう一人でも欠けることは考えられない。

あの五人じゃなきゃ、『frontier』ではない。

ちなみに、バンドリーダーを決めたのはルクシーが加入してからで。

エルーシアの「ミヤーヌが一番しっかりしてるから」という一言で、俺がリーダーになった。

いや、実はルトリアの方が適性あったんじゃないかな、と今となっては思うが。

ルトリアに以前「ルトリア、リーダーやりたいか?」と聞いてみたところ。

「えっ?やだです。えっ!?俺無理ですよ!?俺がリーダーってあなた、『frontier』が迷走するじゃないですか!」と慌てふためきながら言われた。

よく分からないが、リーダーは俺で良いらしい。

俺も、皆に頼られるのは苦ではないし、むしろ頼りにしてくれていると思うと励みになるから、別に構わないのだが。