Music of Frontier

学校には行っていなかった俺だが、勉強は真面目にやっていた。

また、父が経営している楽器専門店の手伝いも。

勉強はちゃんとやっていたお陰で、高校には入れた。

中学校のときの同級生がいない、自宅から遠い高校を選んだ。

高校では、中学のときの教訓を生かし、とにかく目立たないように過ごした。

毒にも薬にもならない、無害な奴だと思われるように。

部活には入らず、ピアノをやっていることも誰にも話さなかった。

それが功を奏し、高校では特にいじめを受けることもなく、ちゃんと三年間通うことが出来た。

まぁ…孤立していたのは相変わらずだったが。

ピアノばかり弾いていた俺が、キーボードに興味を持つようになったのは、実は高校のときである。

高校には軽音部というものがあって、文化祭や、定期演奏会で演奏しているところを見る機会があった。

今までお上品なクラシック音楽ばかりを聴いていた俺にとっては、晴天の霹靂だった。

俺は、自分がクラシックという音楽の枠に囚われ過ぎていたことに気がついた。

素直に、バンドって楽しそうだな、やりたいな、と思った。

今までろくに友達もおらず、音楽部でも浮いていた俺にとって、音楽と言えば一人でするものだった。

でも、そんなことはないのだ。

世の中には色んな音楽があるし、一人で奏でるのも良いが、二人三人、もっと大勢で奏でても良い。

クラシックにもクラシックの良さがあるが、高校に入ってからというもの、俺は純粋に、バンド音楽に憧れた。

けれど、高校の軽音部に入るのは躊躇われた。

母は、「入ってみれば良いじゃない」と勧めてくれたが、また孤立するのが怖かった。

結局高校では帰宅部で、自宅に帰ってから、売り物のキーボードを徒(いたずら)に試し弾きしたり。

相変わらずピアノを弾いたりしながら、yourtubeでバンドの動画を漁っていた。

あとは、親戚が経営していたライブハウスにこそこそと出入りし、色んなバンドの演奏を聴いていた。

高校卒業後は、自宅の店を手伝った。

自分もバンドをやりたいなという気持ちは相変わらずあったのだが、残念ながらバンドは一人では出来ない。

一緒にやってくれる仲間はいないだろうか。でも、俺なんかと一緒にやってくれる人がいるのだろうか。

それに、今まで友達の一人もまともにいなかった俺が、バンド仲間と上手くやっていけるのだろうか…。

色んな不安を抱えていたその頃、俺はエルーシアと出会った。