Music of Frontier

…つまり、俺に…トカゲのしっぽになれ、と言っているのだ。

「学内の不祥事を世間に公表する訳にはいかない。我々は君を退学処分にして、始めからいなかったことにしたいんだ」

…自分の耳が信じられなかった。

「正義」を謳う帝国騎士官学校のトップが。

不祥事を隠蔽する為に、無辜の生徒を切り捨てようとしている。

それが、お前達のやり方か。

そんな非道が許されるのか。

「君には、試験で不正行為したという噂が立っているそうだな。それを利用させてもらう。入学試験のときに君がカンニングしていたということにして、それを口実に君を退学処分にするつもりだ」

「…信じられない…。どうして俺にそんなことを…」

俺が、うんと言うとでも思ったのか?

俺の不正行為疑惑を利用して、それを口実に退学処分にする?

ふざけるな。何でそんなことになる。ふざけるなよ。

「俺が…了承するとでも思ってるんですか…」

する訳がないだろ。

カンニングがバレて学校を退学させられた、なんて両親が聞けば、何て言うか。

まず間違いなく、俺は家から勘当される。

貴族の家は、何よりも体面や世間体を気にする。

試験で不正行為をして学校をクビになった、なんて知れれば、家にはいられない。

貴族としての権利を取り上げられ、一般国民に落とされる。

両親から勘当され、マグノリアの名前まで取り上げられて、他に身寄りもないのに、どうやって生きていけば良いのか。

それに、俺は今まで帝国騎士団に入る為に生きてきたのだ。

帝国騎士官学校をクビにされたら、帝国騎士団に入るという夢も…。

「…頼む、この通りだ」

理事長も、学園長も、担任教官も。

大の男が三人揃って、病院の床に頭を擦り付ける異様な光景を見て。

俺は必死に、吐き気を抑えていた。