Music of Frontier

ところで、俺は今でこそ、『frontier』でキーボードを担当しているが。

これでも、昔は歌うのも好きだった。

今でも、暇があればカラオケに通うくらいには。

まぁ、ルトリアと比べると可哀想なくらい下手くそなのだが。

俺が通っていた幼稚園では、毎朝「お歌の会」とか言って、15分くらい合唱をする時間があった。

俺は幼稚園であの時間が一番好きだった。外遊びの時間より、おやつの時間より好きだった。

歌の会では、俺は一番大きな声を出して歌った。

幼稚園の先生は褒めてくれたし、お遊戯会の合唱では、俺はいつも真ん中に立たせてもらえた。

歌うことも、ピアノを弾くことも、同じくらいに楽しかった。

まぁ…今思えば、歌の方は人に自慢出来るほど上手くはなかったのだが。

大きくなったら何になりたい?と聞かれれば、歌手、かピアニスト、のどちらを答えようか、真剣に頭を悩ませるくらいには…音楽が好きだった。

それで良いと思っていた。父も、母も、幼稚園の先生も褒めてくれた。

俺が歌ったり、ピアノを弾いていると、喜んでくれた。

俺も楽しかった。褒めてもらえると嬉しかった。

故に、気がついていなかったのだ。

少しずつ、自分が周りと差を作っていることに。