Music of Frontier

俺は、昔から…音楽が好きな子供だった。

『frontier』での俺のポジションはキーボードなのだが、元々俺が習っていたのは、ピアノだった。

俺がピアノを習い始めたのは、四歳くらいのときだ。

俺の母親もピアノを弾くのが好きで、趣味が高じて自宅に防音室を造り、大人のピアノ教室を開いていたくらいだ。

俺は幼い頃から、ベビーベッドの横で、子守唄代わりに母がピアノを弾くのを聴いているような子供だった。

そんな俺だから、幼い頃からごく自然に、音楽が身に染み込んでいた。

楽しそうにピアノを弾く母を見て、俺がピアノに興味を持ったのは当たり前のことだった。

試しに、自分も弾いてみたい、と頼むと、母は嬉しそうに俺をピアノの前に座らせ、手取り足取り教えてくれた。

母のピアノを聴くのは大好きだった。

でも、自分でそのピアノを弾くのは、もっと好きだった。

子供だから、指使いはぎこちないし、弾く曲も、有名な作曲家の名曲なんかじゃなくて、精々子供の童謡だった。

それでも、俺は楽しかった。

それに母も、俺の辿々しい演奏でも、手を叩いて喜んでくれた。

母に褒めてもらう度、俺は「もっと上手くなりたい」と思った。

そして、「音楽というのは、なんて楽しいものなんだろう」とも思った。

あの頃、俺は純粋に音楽を楽しんでいた。

音楽が好きであるということを、恥じる必要なんてないと思っていた。