Music of Frontier

俺は、必死に頭を働かせた。

一体、この人は、何を言っているのだろうか、と。

退学?退学って言った?今。

…何で?

俺が退学処分になる理由が、何処にある?

理事長は、わざわざこんな笑えない冗談を言う為に、ここまで来たのか?

でもその顔は、何処までも大真面目だった。

…冗談を言っているようには見えない。

冗談じゃないのなら、これは何だ?

悪夢か?

「…おっしゃる意味が、よく…」

「…最もな反応だ。我々としても、苦渋の決断だ。こんなことはしたくない…。でも、こうするしかないのだ。帝国騎士官学校の威信を守るには…」

「は…?」

何の話だ?

俺は、もしかして夢を見ているのか?

足の痛みのせいで、悪い夢を見ているんじゃないだろうか。

でも、夢ではなかった。

何処までも冷酷で非情な、現実だった。

「今、帝国騎士官学校、我々の第二帝国騎士官学校のどちらも、国民達から非難を浴びていることは知っているだろう?」

「…」

…知ってる。

次々と不祥事が起こり、学校が面目を失っていることは、国民の誰もが知っている。

で、それと俺の退学処分に、一体何の関係が?

「我々はこれ以上、不祥事を重ねる訳にはいかない。学内で生徒に大怪我をさせたなんてことが知れれば、学校はますます非難を浴びることになる。そんなことになれば、我々は今度こそ終わりなんだ」

「…何で…」

俺は呆然とそう呟いた。

学校が終わり?

終わるなら、終われば良いじゃないか。

「帝国騎士団にも言われているんだ。『次、何かまた事件を起こしたら、それなりの責任を取ってもらう』と…。そうすれば私を含め、学校関係者の首が飛ぶ」

首が飛ぶなら、飛ばせば良いじゃないか。

そのことと、俺と、一体何の関係があるんだって。

「そして、間違いなく来年度の国からの補助金は大幅にカットされる。そんなことをされれば…学園を運営することが出来なくなる。今うちに通っている生徒達も…路頭に迷うことになるんだ」

「…路頭に迷うなら…迷えば良いじゃないですか」

俺に何の関係があるのかって、聞いてるんだ。

「そういう訳にはいかない。我々は、歴史ある帝国騎士官学校を守らなければならないんだ。先任の学園長達が守ってきたこの学校を…次代に繋げる使命があるんだ」

「だから、だからそのことが俺に何の関係があるんです」

「…」

後ろめたそうに視線を逸らす理事長を見て、俺はこの人が何を言いたいのか理解した。