Music of Frontier

病院の後、ルクシーと一緒に午後のお仕事に出掛け。

時刻は深夜。『frontier』のラジオ、『Midnight Frontier』のお時間である。

今日の担当は、俺とベーシュさん。

初回ラジオのときと同じ組み合わせだ。





「皆さん、こんばんは。『Midnight Frontier』のお時間です。今週の担当は俺、ルトリア・レイヴァースと」

「ベアトリーシュ・ファルネフレットです。宜しくね」

最初の頃は、この挨拶で既に緊張のあまり声が上ずっていたものだが。

今ではすらすらと言える。慣れと経験は偉大だ。

「今週は、ライブツアー前最後のラジオですね。どうです?ベーシュさん。意気込みのほどは」

「うん。楽しみだよ。今から待ちきれない」

おぉ、さすがベーシュさん。

緊張でヤバいです~なんて絶対言わない。

「俺も超楽しみです。同じくらい緊張してますけどね」

「ルトリアは上がり症だもんね」

「あはは…」

ボーカルの癖にね。

最近はもう慣れてきたとはいえ…初のライブツアーともなれば、そりゃ緊張もする。

さてと…雑談はこのくらいにして。

「それでは、今夜はまず、お悩み相談室から始めましょうか」

「今夜はどんなお悩みかな?」

「どうでしょうね~。じゃあまず…二十代男性、ペンネーム『いちごオーレ』さんからのお悩みです」

最初の頃は、重い悩みだったら嫌だな…なんて心配してたもんだが。

俺もこのラジオで、色んな悩みにお答えしてきたからな。

重いお悩みだろうと、軽いお悩みだろうとお手の物だぞ。

偉大なる慣れと経験の力を生かして、どんなお悩みでも見事に解決して…、

「えー。『実は20年以上生きてきて、未だに彼女が一人も出来ません。どうしたら良いですか?』」

…。

…どんなお悩みでも、見事に解決…。

「…そんなの、俺が知りたいですよ!」

…出来なかった。

見事に解決、全然出来なかった。

あろうことか、リスナーのお悩みをそのまま突き返すという前代未聞の愚を犯してしまった。

そんなお悩み来るなんて聞いてないから。それ、俺の専門外だから。

「ルトリアも、彼女出来たことないもんね」

ベーシュさんもベーシュさんで、ナチュラルに俺の傷を抉るのはやめてください。

「何なんでしょうね、彼女って…。何処かで売ってるんでしょうかね…?通販とかで…」

便利な世の中だからね。

彼女、って検索してポチったら買えるんじゃないだろうか。

「大丈夫だよ。私も彼氏出来たことないから」

「ベーシュさんはあれでしょ…。出来ないって言うか、作らないタイプでしょ?」

作「ら」ないのと、作「れ」ないのは大きな違いがあるんだよ。ねぇ?いちごオーレさん。