Music of Frontier

帰り際、姉さんがこう言った。

「ルトリア…。また、訪ねてきても良いか?」

「えぇ、良いですよ」

お互い多忙な身だから、なかなか時間の都合が合わないかもしれないが。

会いたいと思ってくれてるなら、会おう。

「ありがとう。…それから、ルクシー」

「うん?」

隣で俺達のやり取りを黙って眺めていたルクシーに、姉さんは声をかけた。

「お前は…お前だけは、ルトリアをずっと守っていてくれたんだな」

「…当たり前だ」

「そうか。少し…羨ましいよ」

「…」

自分も、真実さえ知っていれば…と、姉さんは悔やんでいるのだろう。

「ずっと、お前がルトリアを拐かしたのだと思って、お前を憎んでいた…。本当に申し訳ない」

「…別に気にしてない。俺は、自分の為にルトリアの傍にいたんだ」

「…これからも、ルトリアの傍にいてやってくれないか。私の代わりに…この子を守って、支えてやってくれ」

「愚問だな。そんなことは、頼まれるまでもない」

即答だった。

ルクシー…。あなた、なんてイケメンな。

「ありがとう」

姉さんはそう言って微笑んで、そして帝国騎士団に帰っていった。

姉さんの後ろ姿を見送りながら、俺は傍らのルクシーに話しかけた。

「…ルクシー。頼りないかもしれないですけど…。俺も頑張って、あなたのこと守りますね。頑張って支えます」

「…気持ちは嬉しいが、お前は守る側じゃなくて、守られる側じゃないか?」

「あぅ」

そういうことはね、思ってても言わないの。

そりゃ俺は頼りないだろうが。ルクシーに頼りっぱなしだし。

心配だってかけっぱなし。そんな俺が、ルクシーを守ります!なんて無謀かもしれないが。

「あなたが俺にくれたもの、少しでもあなたに返したいんです」

「無償であげたんだから、返してもらいたいなんて思ってないよ」

「それでも返したいんです。俺だって、ルクシーが俺のこと思ってくれてるのと同じ…いや、それ以上にはルクシーのこと好きですからね」

「…」

ルクシーは、無言でちらっ、と俺を見た。

そうだったの?みたいな顔で。

そうだったんだよ。

言ったことはなかったけどね。

「だからこれからも宜しくお願いします。ルクシー」

「そうだな。宜しく、ルトリア」

「超頼り甲斐のあるルトリアになってみせますよ、俺は」

「ならまずは、午前からケーキを二切れも食べるのをやめてくれ」

「そ、それは言わない約束でしょ!」

あと、食べてないから!今日は未遂だから!

大体、ルクシーのケーキが美味しいのが悪いんだよ!

しかも、俺の一番好きなチョコケーキ。

甘くて、チョコの味が濃厚で、スポンジケーキの間に挟まってるいちごが…。

…じゅる。

「…」

…後で食べようかな。食べ損なったもう一切れ。