Music of Frontier

思い出す。昨日のハロウィンライブ。

『R&B』のえら~い人がわざわざ選んで持ってきた、真っ黒なハロウィンコスプレ衣装を見に纏ってのライブ。

…『frontier』のライブを見慣れている人なら、「今日は変わった格好してるなぁ」で済ませられるけど。

初ライブが昨日のアレって。

お堅い姉には…少々…キツかったんじゃないだろうか。色んなものが。

「…どうでした?感想のほどは」

あんまり…聞きたくない気はするが。

「お前達は、浮わついた気持ちでやっているんだと思っていた。人に持て囃されるのが楽しくてやってるだけだと…。でも、昨日のお前達を見て、お前達なりに一生懸命なんだと分かった」

「…」

「…なんのことはない。私が帝国騎士団で全力を尽くしているのと同じだ。お前は今、自分の選んだ道を全力で生きている。…そう思ったよ」

「…そうですか」

そりゃ…良かった。

そう思ってくれたのなら、俺もアイドルやってた甲斐があるってもの、

「…ただ…あの格好はどうかと思うぞ。人の…趣味に口を出すのは余計なお世話だと思うが…」

「…違います。あれは誤解です」

違うんだよ。あれは俺の趣味じゃなくて。

俺の上司の趣味であって。着たくて着ていたんじゃない。

「いつもは…もっと大人しい服着てますよ。昨日のはハロウィンイベントだったから…」

よりにもよって、初ライブが昨日のアレとは。

そりゃ初心者には刺激が強かったことだろう。

「今度の…ライブツアーでは、もっと普通の格好してますから…」

「そうか…」

「…良かったら、見に来ます?ツアー」

「?でも…チケットはもう完売していると」

チケットサイト、見てくれたんだ。

「事務所が買い取ってるチケットが、また残ってるんです…。日にちの都合が合えば、譲りますよ」

「ありがとう。助かる」

本当は、あんまりこういう特別扱い的なことはしちゃいけないのだが。

今回は目を瞑って頂きたい。

ベーシュさんのお父様にも譲ったしな。

「ルトリア…。私はもう止めない。お前のやりたいように、自分の人生を生きてくれ」

「…はい」

言われなくても、そのつもりだったが。

改めて姉にそう言われると…許しを得られたようで、心が軽くなった。

「それから…何か困ったことがあれば、いつでも言ってくれ。お前にあんな酷い仕打ちをしておきながら、白々しいとは思うが…それでも、私はまだ…お前の家族のつもりだから」

「…」

「父上と母上は、まだお前がアイドルをやってることに反対してる。でも…いつか、説得してみせる。だから、ルトリア…」

「…ありがとうございます、姉さん」

いつ以来だろうか。彼女のことを、そう呼んだのは。

姉はハッとして顔を上げた。

「…まだ、そう呼んでくれるのか」

そうだね。もう二度と呼ばないつもりだったが…。

でも、姉さんの言う通り。縁を切ったとはいえ、家族であることに変わりはない。

「あなたが俺を弟と呼んでくれる限り、あなたは俺の姉さんです」

こんな不出来な弟で申し訳ないが。

あなたの望むように生きられなかったことも、本当に申し訳ないが。

それでも、俺を弟と呼んでくれるなら。

俺も、あなたを姉と呼ぼう。

「…ありがとう、ルトリア」

姉さんは、涙を滲ませながらそう言った。

…もう二度と、会わせる顔なんてないと思っていた。

今でも、許したのか許してないのかと聞かれても、答えられない。

だが、過去を振り返っても、もうどうすることも出来ないから。

俺は、誰も憎まない。誰も恨まない。

誰だって、俺だって…皆、今を必死で生きているんだ。