Music of Frontier

…それで。

俺が気になってるのは、そんなことじゃないのだ。

姉が謝ろうが、謝るまいが、どちらでも構わない。

それより。

「…他に言いたいことがあるんじゃないですか?」

「…あぁ」

だよね。

俺が知っている姉なら…恐らくは。

「…戻ってくるつもりはないか?マグノリアの家に…」

…やっぱり、そう来たか。

言われると思ってたよ。

家に帰ってこいって。またマグノリア家に。

「俺が帰るなんて、あなたが許しても両親が許さないでしょう」

「二人は私が説得する。お前は何も悪いことなんてしてないんだから、家を追い出されなきゃならない理由はない」

帝国騎士団の人も言ってたね。同じことを。

確かにそれはその通りなんだけど…。でも、戻りたいか戻りたくないかと言えば、それはまた別の話。

「お断りします。俺は帰りません。あなたの言う水商売…アイドル活動が忙しいですからね」

「帰ってきても、このまま続ければ良い」

本気かよ。

貴族がアイドルって、新しいな。

ルクシーもそうなんだけど。

「だから、あなたが許しても両親が許さないでしょうって。どうせ今から実家に帰っても、帝国騎士にもなれない役立たずなんて、政略結婚にでも使われておしまいですよ」

それ以外に何の価値がある。

マグノリア家にいる限り、俺は自分のやりたいことは出来ない。

「あなたの気持ちは分かります。別に意地張ってる訳でもありません。俺は帰らない。家の名前に縛られたくないんです」

「…」

姉は、苦しげな顔で俯いた。

…そんな顔しないでよ。こっちが申し訳なくなるじゃん。

でも、帰る訳にはいかないんだよ。俺だって。

「…分かった。なら…無理に戻ってこいとは言わない」

「ありがとうございます」

「…あくまで、アイドルは続けるんだな?」

「やっぱり、水商売はやめて欲しいって?」

もっとまともな、真っ当な仕事を紹介するから、そちらに転職しろ、と。

そう言われるのかもしれないと思って、俺は言い返す言葉を考えていた。

すると。

「いや…今は、そんな風には思ってない」

「…?」

思ってない?何で?

一体どういう風の吹き回し…、

「昨日…お前達のライブを見た」

「…は?」

「帝都でやっていただろう?ハロウィンイベントの…」

…。

…あれ、見てたの?

なんか…あの…途端に姉と目を合わせるのが気まずくなってきた。