Music of Frontier

「…あなたが謝るのは勝手。でも…少なくとも今の俺は、あなたに助けてもらいたかったとは思ってませんよ」

「…?」

あのとき、姉がもし味方をしてくれていたら、俺は救われていただろうね。

あんな、地獄のような二年間を過ごす必要もなかったかもしれない。

だけど、もし姉が味方だったとしたら。

「…あなたが俺を突き放したからこそ、俺は今ここにいる。ルクシーがいて、『frontier』の皆がいる。あなたと一緒にいたら、彼らには出会えなかった。そう思うと、それで良かったんです」

姉があのとき俺を庇ってくれれば、俺は多分、今でもマグノリア家にいただろう。

心の傷も癒えないまま、一日中ベッドの上で、鬱々と死んだように生きていただろう。

その姿が、自分で想像出来る。

俺が今、こうやって立ち直れたのは、

ルクシーと、『frontier』の皆がいたからだ。

音楽に出会ったからだ。

例え姉と決別しようと、マグノリアの家から追い出されようと。

それでも、俺は今の自分の方がずっと好きだ。

彼らと出会えなかったかと思うと、気が狂いそうになる。

「俺はこれで良かったんです。今は幸せだから、これで良かったんです…。あなたがもし、俺を今でも愛してくれているのなら…もう、自分を責めないでください」

死ぬほど後悔したって、過去は変えられない。

俺はそれを、よく知っている。

ならばどうするか。

死ぬほどの後悔を胸に抱いて、前を向き、今を生きるしかない。

どんなに辛くて耐え難くても。

「…俺はちゃんと幸せですよ」

「…ルトリア…」

帝国騎士にはなれなかった。

足もポンコツになった。

でも、それ以上に愛すべきものを、この両手に抱えきれないくらいに得ることが出来た。

自分が不幸だなんて、どうして思えるだろう?

結果オーライ…と言えるほど、生易しい傷ではない。

だが、こうなったのは決して姉の責任ではなかった。

姉を責めても仕方がない。

その顔を見れば分かる。真実を知った姉が、どれほど苦悩したか。

そりゃ、俺の方が辛い思いしたし、死ぬほど苦悩もしたけどさ。

不幸自慢したって仕方ないし、姉を責めたからって過去が変わる訳じゃない。

「…本当に…本当に済まなかった…」

姉は、泣きそうな顔で頭を下げた。

…嫌だな。俺が泣かせたみたいじゃん。

いや、俺が泣かせたんだけどさ。

もう良いですよ、気にしてないですから。とは言えなかった。

もう良い、で済ませられるほど生易しい過去じゃない。

気にしてない訳でもない。

でも、謝って欲しくはない。

これ以上、過去に振り回されるのは御免だった。