Music of Frontier

その日の午前は、珍しくお仕事が何もなかった。

午後からは、また動画撮影と、それから今日のラジオは俺が担当なので、夜になったらまた出ないといけない。

でも、午前はお休みなので。

ルクシーと二人で、まったり過ごしていた。

「はぁ…。紅茶って…美味しいですよねー」

「…あぁ、そうだな」

「ルクシーとルクシーのお母様が作ってくれた、このチョコケーキも絶品…」

「…そりゃ良かったな…」

「…ルクシー。さっきから何で生返事なんですか?」

傷つくんですけど。

ちゃんと相手して。

「いや…。今はまだ午前なのに、もうティータイムするのか…ってことは置いておいて」

「はい?」

「お前、肉食わせようとしても食わないが、ケーキとか甘いものだったら何も言わなくても食べるんだなって」

「…」

…悪かったですね。

「…もう良いもん。ルクシーが酷いから、今日からおやつ食べるのやめます」

「別におやつくらい良いけどさ。食べないよりましだし…。でも、砂糖じゃなくてお前は肉を食え、肉を」

俺、アレだもん。

草食系男子兼、スイーツ男子って奴だもん。

良いじゃん、おやつ。美味しいじゃん。

別にお肉が嫌いな訳じゃないんだよ?でも何て言うか…お肉よりはお砂糖かな~って。

「だってほら、これルクシーとルクシーのお母様が作ってくれた奴ですから。つい美味しくて、一杯食べちゃうでしょ?」

「うん…。まぁ喜んで食べてくれるのは良いけど、程々にしておけよ。お前、『さっきケーキ一杯食べたから、お昼ご飯は要りません』とか言うだろ?」

ぎくっ。

「…もう一切れ食べよーっと」

「あ、おいこら。人の話を聞け」

甘いものは別腹、って言うだろ?

俺、胃袋二つあるから。一つは甘いもの専用で、もう一つはそれ以外。なんちゃって。

今のちょっと面白かったから、後でTwittersで呟こう。

ルクシーには怒られそうだ。

俺は取り皿にチョコケーキをもう一切れ乗せ、さて食べよう…とした、そのとき。

ルクシーのお母様が、困ったような顔をして現れた。

「ルトリア君、ちょっと良い?」

「ふぇ?」

あ、ルクシーのお母様…。

ケーキ美味しいです。ありがとうございます。

「その…あなたにまた、お客様が来てて」

「…」

俺は、ルクシーと顔を見合わせた。

…俺、よくお客様来るなぁ。

人気者なのかもしれない。

「…今度は誰ですか?また帝国騎士?」

もうあの一件は収まったじゃないか。

裁判も終わり、あの件に関与した学園関係者は、皆裁かれた。

あとのことは、俺の知ったことではない。

それなのに、今更何の用…。

「帝国騎士は…帝国騎士なんだけど、実はその人…マグノリアを名乗ってて」

「…は?」

「弟に…ルトリア君に会いに来た、って…」

「…」

これには、俺もルクシーもびっくりであった。